ヴァン・クロイツァーは、幼い頃、両親に棄てられ、路上をさ迷っていたところを傭兵団に拾われた。以来、二〇年近くの間、戦場を渡り歩き、数えきれぬほどの人間を殺しながら、生と死がもつれあう世界でしぶとく生き残り、一ヶ月前、ようやく自由を手にしたばかりだった。

 ・・・・・・遡ること二ヶ月前、カルナップ軍とエルザリオン軍が、両国の国境線沿いにあるナスタ平原にて激突した。
この戦いは、カルナップ人の狩人が、エルザリオン側の山林で狩りをしていた際、誤ってエルザリオン人の農夫を射殺してしまったことに端を発しているが、それは単なる口実であって、両国が抱えていた潜在的な敵愾心が爆発したことは疑う余地がない。両国はエルザリオンが小国であった当時から、各種権益や国境線を巡り、繰り返し衝突してきた間柄である。
 動員された兵力はカルナップ軍が一二万八千人、エルザリオン軍が八万五千人で、両軍とも一割ほどが傭兵だった。当初は兵力が多いカルナップ軍が優勢とみられており、そのためヴァン・クロイツァーが所属していた傭兵団はカルナップ側に付いていた。しかし、正午に始まった戦いが決着をみた時、勝者として戦場に立っていたのはエルザリオン軍であった。
 なぜ、兵力が多かったカルナップ軍は負けたのか。そこにはエルザリオン軍の指揮官を務めていた皇太子シュナイザーの狡猾な戦略があった。
 戦いが開始された当初、カルナップ軍は戦いを優勢に進め、エルザリオン軍を二リーグ(一リーグ、二・五キロメートル)も後退させた。それがシュナイザーの狡猾な罠であると知らずに。
 エルザリオン軍は大量の燃料を運び込んでいた。動物や植物、化石成分由来の油、砕いた石炭や木炭、硫黄、そして藁や木屑などだ。それらを、エルザリオン軍は、自陣に大量に撒布していた。

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 ベネディクトが口を開いた。

「トリエステの支部へ通達を。すぐに第六回目の探索に向けた準備をするように、と」
「承知しました」

 ギムレットはうやうやしく低頭し、執務室を後にした。
 こうして、第六回目の探索がおこなわれることになったのであった。

          *

 港町全体が見渡せる小高い丘の上にひとりの男が立った。
見渡す限り、どこまでも続く青い海からは、時おり潮の香りが混ざった風が吹きつける。心地よい風だ。空には雲がひとつもなく、照りつける太陽が暑い。すでに季節は夏から秋へと移行しつつあるが、ルドリア海に面したこの港町では、季節は未だ真夏のままであるようだった。

「ここがトリエステ、か」

 自分に言い聞かせるようにして呟く。長い間ひとりでいると、どうやら独り言をいうクセがつくようだ。
 エルザリオンの帝都グノールを出立してから一ヶ月、男は孤独を友として、ここまでやって来た。道中、盗賊や野盗の襲撃を受けるなどしたが、別になにか目的があってわざわざここまで来たわけではない。ただただ、あてもなくさ迷い歩き、ここまでやって来たのだった。しいて目的をあげるとするならば、途中で寄った宿場町にて、トリエステから来たという行商人に、トリエステで採れる海の幸は極めて美味だった、という情報を聞いたからであろうか。それ以外、男に目的らしきものはなかった。

「・・・・・・海の幸、か。さて、どんなモノなのかな」

 顔に微かな笑みを浮かべながら、男は呟いた。
 男の名はヴァン・クロイツァーという。年齢は二六歳。長身で、なびく服のためやや痩身に見えるが、腕は太く、胸は厚い。髪の色は薄い灰色で、表情は穏やかだが、左右異なる色をした瞳はまるで猛禽類のように鋭い。頬や腕、さらに首筋に浮かんでいる古い刀傷が、男がただの旅人でないことを証明していた。

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「結果だけを申しますと・・・・・・派遣した八五名は、全員が未帰還となりました」

 ベネディクトは深いため息を吐いた。予想していたとはいえ、残念すぎる結果であるだけに、その失望は大きかった。

「得られた成果や収穫は?」
「ゼロです。なにもありません」
「そう・・・・・・」

 短く呟き、ベネディクトは肩を落とした。
 旧大陸の探索は、前総帥時代より始まったチェザーレの新たなる事業のひとつである。五〇〇年前に放棄されて以来、手付かずになっている旧大陸を再び開拓することができれば、チェザーレはもちろん、人類にも大きな恩恵がもたらされることは明白である。むろん、それだけが理由ではないのだが、ともかく、チェザーレは利益を得るために旧大陸へと乗り出すことを決めた。
 しかし、旧大陸は、「危険に満ちた土地」ということ以外、なにもわかっていない。そこでチェザーレは、情報を収集するため、これまでに五回にわたって探索団を派遣しているのだが、その状況は悪いのひと言に尽きる。唯一、わずかな成果があったのは第四回の探索だけで、残りは派遣した探索団が行方不明になるという結果で終わっているのだ。しかも第四回の探索も、結局は全員が行方不明または死亡という結果に終わっている。
 探索の実施は、回数を重ねるごとに難しくなっている。失敗の噂が広がり、優秀な人材の確保が困難になっているだけでなく、再三に渡ってトゥールデ教国から「旧大陸の探索を即刻中止するように!」という要望書が届いているのだ。現段階ではまだ無視できる範囲の障害ではあるが、このまま失敗が続けば、いずれ探索団派遣に支障がでる恐れがある。
 だが、この程度の失敗でめげるようなチェザーレではない。巨額の利益を得るためには巨額の損失を覚悟しなければならないのが投資だ。そして、投資とは、短期間ではなく、長期的な視点で物事を見極めることこそがもっとも重要なのである。

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プロフィール

Author:ダメ人間
社会の底辺で生息している「ダメ人間」です。
若くないです。もうおっさんです。
戦記ものの小説を主に書いていますので、どうぞ見てやってください。

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