メガシオンは恐ろしく強く、それこそ旧大陸にいた狂獣や錬金獣とは比較にならぬほど強大であった。金属の玉を高速で連続して放つ技、建物や瓦礫を消滅させる妖しげな光、振り下ろされる大剣は容易に建物や瓦礫を斬り裂き、単純な力はこの世のどんな生き物よりも強かったであろう。その攻撃は的確であり、すべての面でメガシオンの性能はヴァン・クロイツァーを上回っていたが、唯一、速度のみがヴァン・クロイツァーの方が上であった。くわえて、すでに胸甲に亀裂が生じていたことも幸いだった。メガシオンの外殻は、それこそ並の剣ではかすり傷すらつけられぬほどの硬度を誇っていたが、生じていた亀裂はすでに内部にまで達しており、そこに必殺の一撃を叩き込むことでヴァン・クロイツァーはメガシオンに勝つことができたのだった。もし敵が万全の状態であったなら、勝つことは難しく、それこそ返り討ちに遭って死んでいたかもしれない。
 だが、彼は後になって思うのだ。もし、あの時に死んでいれば、これほど苦しまずにすんだかもしれない、と。
 メガシオンを倒し、炎上するトリエステを脱出した後、オストバール号に回収されたヴァン・クロイツァーは、カルナップ経由でダーディル騎士団領国に入国した。そこでチェザーレ総帥を名乗る娘と面会し、旧大陸に関する情報を絞りとれるだけ絞りとられた。その後、苦労をねぎらうとして優遇されたが、ヴォルガ総反攻作戦がおこなわれ、三カ国連合軍が大敗を喫し、そしてなぜかエルザリオンによる大陸統一がなされて旧大陸への進出が決定してからは、自分の立場も一変した。
 ある日、ヴァン・クロイツァーは、ベネディクト・チェザーレに呼び出され、次の要請を受けた。

「あなたの旧大陸での経験を生かしてこの者たちに実戦形式での戦闘訓練をつけてほしいの。お願いできるかしら」

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 お仕事をお願いしているデザイナー様より確認用の画像が到着。
 ダメ人間のオリジナルカードゲーム「マネー・ウォーズ」の1枚。
 イラストはイラストレーターの「まとめろ」氏に描いていただきました。
 そろそろ同人サークルでも創設しようかしら。
マネー・ウォーズ 倒産
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 ・・・・・・シュナイザーが旧大陸への進出を発表してから一ヶ月が経過しようとしていた。エルザリオンの事業として、チェザーレ主導で準備が進められていた旧大陸への進出計画は、投入する大型ガレオン船一五〇隻、参加人数一万二〇〇〇人という規模にまで膨れ上がっており、各地で各種訓練が実施されていた。特に力を入れておこなわれていたのが戦闘訓練で、選抜された戦闘員は「対怪物戦」を想定した実戦形式での訓練を日夜続けていた。訓練の総指揮を務める人物はヴァン・クロイツァーであった。

「もっと剣を鋭く振れ! 怪物どもの身体は鋼のように硬く、並の一撃では歯がたたん。必殺の一撃を打ち込むつもりで剣を振るんだ!」

 ヴァン・クロイツァーの叱咤が飛ぶ。内心で、なぜこんなことになってしまったのか、と自問しながらも、彼は自分に任せられた仕事をこなすしかなかった。
 旧大陸から戻った直後、ヴァン・クロイツァーは、炎上するトリエステの港町にてメガシオンと遭遇し、戦闘をおこなう羽目になった。オストバール号の船長であるアル・ゴネに船に留まるよう指示されたのだが、トリエステの港町に住んでいる友人の安否が気になってむりやり上陸したからだ。
 炎上するトリエステの港町を駆け抜け、ヴァン・クロイツァーが友人の姿を発見した時、事態はすでに手遅れだった。友人のロンバルドはすでに焼け死んでおり、傍らにいた彼の妻も腹部を抉られて瀕死の状態だった。

「ど、どうか・・・・・・この子を・・・・・・」

 と、友人の妻から託されたのは生まれたばかりの赤ん坊で、友人の妻はヴァン・クロイツァーが赤ん坊を受け取ったのを見届けると息を引き取った。
 その直後、ヴァン・クロイツァーの前にメガシオンが現れ、問答無用の攻撃を仕掛けてきた。相手の奇々怪々な攻撃に戸惑いながらも、自分が生きるため、そして託された赤ん坊を護るため、ヴァン・クロイツァーは、死力を尽くして戦った。

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これに立ち向かったのが進駐したエルザリオン軍であった。エルザリオン軍は襲撃してくるメガシオンに毅然として立ち向かい、自らの犠牲を省みず、カルナップやルドリアの国民たちを護って戦った。この行為によってエルザリオン軍に対する両国の国民の心境に変化が現れ、やがてエルザリオン軍に対する非難や不安の声は消滅したのである。

「我々の敵は人間にあらず、メガシオンである!」

 そうシュナイザーが宣言したように、いまは人間同士が争っている場合ではないことに多くの人々が気づいたのだった。かくして、広範囲での反メガシオン、対メガシオンの動きが展開され、カルナップやルドリアの人々は率先してメガシオンと戦うエルザリオンに協力するようになり、かくしてカルナップ王国とルドリア王国は形式的な存在となりはて、エルザリオン帝国による「大陸統一」がなされたのだった。
 これによってエルザリオンとチェザーレの思惑のひとつが達成された。エルザリオン帝国による「大陸統一」という偉業は、続く計画の第一歩であったからだ。
 シュナイザーはさらに全世界へと向けて通達した。

「海の向こう側にある旧大陸には資源がある。それも、メガシオンを打ち倒すことが可能な武器を生成する資源がだ。よって、我が国はこれより、旧大陸へ進出することをここに宣言する。勇気ある者はこぞって馳せ参ぜよ!」

 この声明にいち早く賛同を表明したのがチェザーレであった。チェザーレは、総帥であるベネディクト・チェザーレの名においてこの計画に全面的に協力することを表明し、探索にあたっての資金、物資、食料、資材、船舶を供出することを決め、さらに旧大陸へと送り込む人材の確保を率先しておこなうことを宣言したのだ。この動きにカルナップやルドリアの人々も反応を示し、かくして人類は、空前の規模で旧大陸に臨むことになる。

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戴冠してから一ヶ月後、シュナイザーは古城ベリセーヌ城にてチェザーレの総帥であるベネディクト・チェザーレとの会談をもった。これはエルザリオン側からの要請でおこなわれた会談であり、非公式の極秘としておこなわれた。
 この会談でどのようなやり取りがなされたのか、歴史は黙して語らない。しかし、幾つかの決定が成され、それが実行に移されたのは確かだった。
 世界が驚いたのはそれから数日後のことであった。
 なんと、カルナップ王国と、ルドリア共和国が、相次いで国の主権を放棄し、エルザリオン帝国の保護国になると表明したのである。表向きの理由は、「自国の社会秩序が崩壊し、治安が悪化したまま回復が不可能になったから」というのが理由であったが、発表がなされる数日前から両国では有力な王族や貴族たちが相次いで暗殺されており、その後任にチェザーレの息のかかった人物たちが就いた事実を鑑みれば、両国の動きはエルザリオンとチェザーレの思惑が働いた結果であることは明らかであった。
 シュナイザーはすぐさま両国からの要請を受諾し、治安維持のため、軍隊を派遣することを決めた。カルナップ方面にはカイル・ルー軍将率いる二〇万が、ルドリア方面にはアーバネット・マーベラス軍将率いる一八万がそれぞれ派遣され、多少の混乱がみられたものの、両軍将はすみやかに両国を掌握することに成功した。
 エルザリオン軍の進駐に対し、カルナップ・ルドリア両国の国民は強く反発し、エルザリオン軍進駐当初は暴動の発生など多少の混乱がみられたものの、その動きは数日中に鎮火していった。
 理由は、メガシオンによる襲撃が再開したからである。
 ヴォルガ総反攻作戦以降、一時、メガシオンの襲撃は途絶えていたが、寒さが和らぎ、雪が溶け、季節が冬から春へと移行しはじめて、メガシオンたちがまた人間狩りを再開したのだ。標的はもちろん大陸全土の人間であり、その被害に国境線は皆無であったから、カルナップやルドリアでもメガシオンによる被害が続出した。

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プロフィール

ダメ人間

Author:ダメ人間
社会の底辺で生息している「ダメ人間」です。
若くないです。もうおっさんです。
戦記ものの小説を主に書いていますので、どうぞ見てやってください。

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