かつて旧大陸であった戦乱の時代が、ここ新大陸でも再現されたのである。混乱に伴って大小様々な勢力が興り、そして滅んでいった。大規模・小規模を問わず戦いが全土で繰り広げられ、多くの血が流れ、そしてこの混乱が鎮静化し始めた頃、大陸には幾つかの国家が形成され、それらは無秩序(あるいは秩序的)に、時間をかけて統合と分裂を繰り返し、やがて現在の情勢を形作っていった。
 新暦三四五年、カルナップ王国が対話や武力衝突を繰り返した末、大陸北西部全域の支配に成功する。
 新暦三九九年、小国エルザリオンが侵略戦争を開始し、四二八年までに大小七つの国家の侵略に成功。この覇業により、エルザリオンは「帝国」と称し、大陸の東部全域を支配下に置いた。
 新暦四五〇年には、大陸の南西部で覇権を争っていたベトラ、クルツク、エスタニーニャのルドリア三国で民衆が一斉に蜂起し、王権を打倒。国民を主体とした政治を訴える社会民主勢力によって革命が成立する。これにより、大陸南西一帯を支配していた旧ルドリア三国が統一され、ルドリア共和国が誕生した。
 この間、旧大陸を神聖視し、渡航を禁忌とする宗教団体トゥールデ教会が各地で勢力を拡大させ、新暦四一三年、カルナップ王国、エルザリオン帝国、そしてクルツク国との交渉の末、大陸のほぼ中央に「聖都」を築き、周囲三〇リーグ四方を自らの領域として神聖トゥールデ教国を建国する。
また同じ頃、独自の武力によって各地の戦場で力を発揮していた傭兵集団・ダーディル騎士団が、その強力な武力を背景にして大陸の西にあるエトゥー半島を根拠地と定め、ダーディル騎士団領国とした。そしてこのダーディル騎士団領国に拠点を置くのが、莫大な富力で大陸全土に強い影響力を持つ組織・チェザーレであった。
 この勢力図は、新暦五〇〇年まで安定をみる。国々は、時おり、領土や利益、権利や互いの矜持を巡って争いはするものの、それが全面戦争に発展することはなく、国境線にもほとんど揺るぎがなかった。
 ・・・・・・しかし新暦五〇〇年、突如として破滅が訪れる。巨大な災厄が天空より来訪したのだ。

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 ゼスト皇帝は異世界を征服するため、軍隊を結集し、次元の壁に巨大な「穴」を開けた。その「穴」が世界に巨大な歪を生じさせ、前述のような超常的な現状を生じさせたのである。侵略しようとして逆に侵蝕されたわけだ。結局のところ、エルフールは自らの過信と野心のため、自業自得で滅亡した。これは驕り高ぶった人間に対する神の罰だったのかもしれないが、それは定かではない。
 とにかく、エルフールは滅びた。これは事実である。
 しかし、人間という種は滅亡を免れた。旧大陸という人類発祥の故地は捨てる羽目になったが、生活の基盤が新大陸へと移ったからだ。
 新大陸が人類文明の新たなる世界となった。
 当初、新大陸では、エルフールで用いられていた政治・経済・社会・軍事などの基盤構造によって運営が成されていたが、やがてその体制は崩壊することになる。支配者階級――旧エルフール皇族や貴族たちの政治的手腕に問題があったからだ。彼らは過去の栄光と栄華を懐かしみ、堕落した生活と贅沢を続け、人々に重税と圧制を敷き、自らの利益だけを求めて考えた。
 エルフールが繁栄を極めていた頃であれば彼らの振る舞いも咎められることはなかったであろう。上も下も豊かな時代であれば市民たちの心にもゆとりが生じ、上の人間たちの多少の欠点にも目を瞑ることができたからだ。しかし、エルフールが滅亡し、人類社会全体が大混乱に陥っている最中にそう振る舞われては、市民たちも我慢できない。ゆえに民衆の蜂起は半ば必然といえた。
 大陸全土で民衆たちが一斉に立ち上がり、その蜂起には軍の一部も加担して、旧エルフールの皇族や貴族たちはあっという間に打倒された。
 しかし、支配体制が崩壊したことで大規模な混乱が生じることになる。それまで曲りなりにも保っていた政治・社会・秩序・治安体制が崩壊し、人為的な大混乱が生じたのだ。
 かくして歴史が繰り返された。

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「エルフールは繁栄を極め、この世の全てを我が物とし、征服したが、その滅亡は突然であり、唐突であり、そして一瞬であった」

 ある年代記はそのように記述しているが、その文章はあながち間違いではなく、エルフールの滅亡は確かに唐突で突然だった。
 ある日、なんの前触れもなく、天変地異がエルフールを襲った。
気候が大規模な変動を起こし、雹と落雷が大陸全土に降り注ぎ、嵐や竜巻が止むことなく頻発した。それに連動するようにして巨大な地震が各地で発生し、津波が沿岸の都市を飲み込んだ。山という山では火山が噴火し、それが原因となって森林や原野が炎で包まれ、大陸全土が灼熱と化した。それだけではない。強力で凶悪な未知の疫病や奇病の蔓延し、得体の知れない現象や事象が続発し、そして見たこともないような凶暴な怪物や怪生物が大陸全土に出現したのだ。それら〈魔物〉は積極的に人間を襲った。
 エルフールは文字通り阿鼻叫喚の地獄と化した。
 直接・間接的に死亡した人間の数は最初の一昼夜だけで一億人に達し、三日後には一〇倍にまでその数が加速した。この混乱を逃れようとした人間の数は死者の数と同じ位いたが、目的を達して新大陸に無事逃げのびた者はその千分の一にも満たなかった。こうして繁栄を極めたエルフールはあっけなく滅亡し、その栄光は歴史の彼方へと消えていった。
 いったい、エルフールに何があったのか。
 ここに語られることのない歴史が存在している。
 エルフール最後の皇帝ゼスト三世は祭典で語っていた。

「――近い将来、我々はその異なる世界をも手中に収め、真の世界の覇者として君臨するであろう」

 と。
 その結果がこの惨劇であった。

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 アルマ・ポーロによる新大陸の発見はエルフールの野心に火を点けた。
 エルフールは新大陸を新たな領土とすべく、多数の学者や調査員を派遣して学術的な調査を施した。その結果、新大陸は旧大陸の三分の一程度の規模でありながらも、温暖な気候と肥沃な大地、それに地上と地下、両方の富と資源に恵まれていることが判明したのである。この結果を受け、エルフールは莫大な資本と人員を投下して野心的な大規模開発に乗り出していく。
 エルフールによる新大陸の入植政策――それは完全に成功したといってよい。新大陸の開拓は急速に進み、一世紀が経過する頃には新大陸全土の掌握が完了し、数多くの市や町が各地に建設された。旧大陸からの入植者や新生児の出生も増え続け、二世紀が経過する頃には新大陸の人口は一千万人に達している。この人口の爆発は、経済活動にも極めて活発な影響をもたらしており、物質的な豊かさだけでなく、税収の大幅な増加によってエルフールに金銭的な潤いをもたらした。
 新大陸発見から三〇〇年が経過する頃にエルフールは繁栄の絶頂に達する。国は極めて豊かであり、政治経済は安定をみて、民は戦乱のない平和な時代を愉しんだ。
このように社会経済が右肩上がりでの成長を続けた背景には、むろん、新大陸での開拓事業成功によるところが大きいが、それ以上に、魔学と錬金術の進歩と発展による影響がより強い。不治の病の克服、革新的技術の発明、超硬度を誇る合成金属の精製、そして進歩の集大成ともいえる人造生命体〈錬金獣〉の完成など、エルフールの力は神の領域に踏み込む一歩手前まで達していた。いや、否、本当に神の領域へと踏み込もうとしていたのかもしれない。なぜならば、エルフールはこの世界とは別の世界の存在――異世界の存在を知っていた可能性があるからだ。
エルフールの第三八代皇帝ゼスト三世は、エルフール建国五〇〇年を記念した大規模な祝典で次のように語っている。

「三〇〇年前、エルフールは海の向こう側に新たな世界の存在を確認し、我が物とした。しかし、この世界にはまだまだ未知なる世界が存在している。海の向こう側ではなく、次元の向こう側に。近い将来、我々はその異なる世界をも手中に収め、真の世界の覇者として君臨するであろう」

 ゼスト皇帝による予言とも思えるこの宣言は――しかし、現実のモノとはならなかった。祝典の一ヶ月後、エルフールが滅亡したからである。

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 約一世紀の間、人間たちは殺しあった。戦いにつぐ戦い、争いにつぐ争い。憎み、憎まれ、殺し、殺され、手を組み、裏切り、平和や平穏を踏みにじりながら、平原で、草原で、荒野で、原野で、森林で、河川で、山脈で、海で、湖で、田畑で、都市で――戦いはどこであれ激しくおこなわれた。生まれる子どもの数よりも戦いによって死せる人間の数の方が多いといわれるほど、戦いは長く続き、その間、人間の数は減少の一途を辿った。
 しかし、どんな事象にも必ず終わりがくる。それは一世紀の長きに渡って続いた戦乱の時代も例外ではなく、エルフールという国家の登場と、それに伴う大陸統一という偉業によって、無意味にも思える戦乱の時代は終焉を迎えた。
 人類社会の悲願だった平和と平穏――それをもたらす「大陸統一」という覇業を成し遂げたエルフールは、自らを「大帝国」と呼称し、以後、滅亡するまでの間、旧大陸の支配者として君臨することになる。
 エルフールは戦乱で疲弊した社会基盤を建て直すため、富国豊穣政策を掲げ、多産を奨励し、人口を増やし、各種産業の生産性を向上させ、経済活動に資本を投下し、魔学や錬金術の発展に力を入れた。エルフールによる支配の下、人類社会は急速な進歩を遂げ、建国から二世紀が経過する頃にはエルフールは大洋へと進出していくことになる。
 偉業を成し遂げたのがアルマ・ポーロという冒険家であった。彼はそれまで一般的だった陸上交易とは異なる交易路――海上交易路を開拓すべく、数隻の船を駆って大洋へと乗り出していったのである。

「この世界は一個の球体のような構造をしている。であるならば、大陸の西側から出発すれば、必ず東側に辿り着くはずだ」

 そう信じて。
 アルマ・ポーロは、一度目の航海では嵐に遭遇して失敗したが、それでもめげず、二度目の航海では見事に成功を収め、大陸に辿りつくことができた。しかしそこは、彼が目指した旧大陸の東側ではなく、まったく別の大陸――新大陸だったのである。

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Author:ダメ人間
社会の底辺で生息している「ダメ人間」です。
若くないです。もうおっさんです。
戦記ものの小説を主に書いていますので、どうぞ見てやってください。

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