プロフィール

ダメ人間

Author:ダメ人間
社会の底辺で生息している「ダメ人間」です。
若くないです。もうおっさんです。
戦記ものの小説を主に書いていますので、どうぞ見てやってください。


アクセスカウンター


最新記事


月別アーカイブ


カテゴリ


DLsite

同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com 同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com

モッピー

モッピー!お金がたまるポイントサイト
ダメ人間が利用しているポイントサイトです。ダメ人間はここのモッピーワークスで文章書いて稼いでます。

ハピタス

日々の生活にhappyをプラスする|ハピタス
ダメ人間がお世話になっているポイントサイトです。生活を良くするために利用中。無害で利益があるサイトですよ

 エリアスと出会わなくても、いずれディルクはナトゥース打倒を目指して蜂起するつもりでいた。そのための準備も着々と進んでいた。遠からず、ディルクの勢力が王国を震撼させていたことだろう。
 だが、カードの存在は計算外であった。
 もし、カードの力を知らぬまま蜂起したとすれば、たとえ各地で軍事的な勝利を重ねることができたとしても、最終的にはカードの力によって退けられていたはずである。どんなに強力な軍隊を編成したとしても、強大で強力な魔物の軍勢を使役されてはひとたまりもないからだ。
 だが、エリアスの亡命によって、ディルクは王国側と対等に渡り合える力を得た。ならば、この好機を逃さない手はない。先手必勝、相手が気づき行動を起こすよりも早く動くべきだ。
 すでに戦争の準備は整いつつある。
 カードはすでに一〇〇枚以上の入手が完了した。新兵器である大砲の量産も進んでいる。一般の市民たちを徴兵した準軍事組織である民兵団の編成と訓練も終了した。有事に備えた糧食や物資の備蓄も日を追うごとにその量を増している。密偵や間者による情報収集も上手くいっている。そして、一度は破棄した案であったが、ナトゥースの属国や隣国への秘密裏の対外工作も順調だ。あとは王国の中枢に決定的な一撃を叩き込み、混乱の渦中を作りだせば、開戦のラッパは鳴ったと同然である。
 ディルクは完全に身支度を整え終えた。彼は生まれたままの姿で寝所に横たわっている姫に背を向けながら言った。

「では、行ってくる」
「お気をつけて。吉報をお待ちしておりますわ」
「ああ、任せておけ」

 言葉は軽い。だが、その自信は決して虚栄からくるものではない。これまでの実績と経験、そして長年に渡って培ってきた実力があってこそ初めて口にすることができる言葉だ。
 ディルクが居室を後にした。
 その後ろ姿を見送って、エリアスはもう一度、呟いた。

「気をつけて、ディルク」

 それは彼女の本心の言葉であった。
 ・・・・・・この数日後、「クローレンツ城侵入者事件」が発生する

以下、スポンサーリンク
モッピー!お金がたまるポイントサイト
スポンサーサイト
 エリアスの真意は定かではない。もしかしたら平気で嘘をついているのかもしれない。嘘をついてディルクを油断させ、後々その命を奪うという魂胆かもしれない。だが、この一件でディルクは彼女の評価を見直した。ローシュのように利用すべき相手としてではなく、ジークのように共闘する仲間として認識を改めたのである。以来、ディルクはエリアスを交えて積極的に討議するようになった。
 ・・・・・・寝台で情事に溺れるふたりに愛や恋の関係はない。あるのは肉欲と、そして打算のみであった。
 しばしの間、豪奢な寝台の上で絡み合っていたふたりだが、やがて事を終えると、ディルクは余韻を愉しむことなく身支度を整えた。疲れきっているエリアスは寝台に横たわったまま男を眺めているだけだ。

「もう行かれるの?」

 甘い声で問いかける。
 その声に応じるディルクの返答は無機質極まりないものであった。

「ああ、今夜中にクローレンツを発ち、王都へ向かう。すでに賽は投げられているのだ。事を済ますのであれば早い方がいい」

 そう、すでに賽は投げられているのだ。
 エリアスのブレスト地方への逃亡が、打倒ナトゥースの動きに拍車をかけた。
 エリアスには力がある。その気になれば国一つを滅ぼすほどの力がだ。そんな人物を逃亡させておくほどナトゥース王国は甘くはない。八方に捜索の手を伸ばし、現在も血眼になって探している最中であろう。いずれ、エリアスの居所も突き止められてしまうはずだ。
 そうなる前に先手を打つ必要があった。

「カードのことを事前に知ることができてよかった。さもなくば、たとえ勢力を拡大して蜂起しても惨敗するところであった」

 とは、口に出さぬディルクの本心である。

以下、スポンサーリンク


王宮の一室で王族の重鎮たちによる秘密裏の会議が開催されたと同じ日の夜、王都から遠く離れたブレスト地方の都市クローレンツにあるディルク邸では、一対の男女が夜の営みを愉しんでいる最中であった。
 ブレスト地方に逃亡してきた姫エリアスは、当初、総督府であるクローレンツ城の一室で生活を送っていた。だが、多くの人が出入りするクローレンツ城ではエリアスの存在がばれてしまう危険があると判断され、より安全なディルク邸へ住まいを移すことになったのである。そのため、ディルクとエリアスの会話は必然的に多くなった。
 エリアスと接してディルクには判ったことがある。
 それは彼女の内面の黒さだ。
 穢れている、と言っても過言ではないかもしれない。エリアスが吐き出す言葉には乙女の要素はまるでなく、熟練の陰謀家とほぼ同じであったのだ。王族に関する秘密、宮廷内での人間関係、ナトゥースの裏の歴史、各国との密約、そしてそれらを利用した陰謀や策謀をエリアスは積極的にディルクに提案した。それは参謀を務めるジークですら舌を巻くものばかりであった。
 ある時、苦笑しながらディルクが聞いたことがある。

「良いのですか、そのような極秘の情報を我々のような人間に話して。あなたが王位を奪還してから悪用するかもしれませんぞ」

 するとエリアスは微笑して答えた。

「ええ、構いませんわ。どうせ、あなたはその時には、決して喋ることができなくなっているんですから」
「ほう、それはどういう意味で?」
「だって、女王の夫となる人間が、自らの立場を危うくするような発言をするとは思えませんもの」
「・・・・・・なるほど。これは一本取られたな」

ディルクは唖然とした。まさか、自分よりも年下の娘に手玉に取られるとは思ってもいなかったからだ。

以下、スポンサーリンク


「お待ちください、アルバトロス殿。そんな悠長なことを言っていて相手側に先手を打たれたのでは元も子もありませんぞ。もし、相手側に反意があれば、話し合いを好機とみて時間稼ぎに徹するかもしれませぬ。そうなった場合、後で悔いることになっても遅いのではないでしょうか?」
「・・・・・・ブラッドリー、おまえは優秀だが、血を好むあまり失念していることがある」
「?」
「ブレスト地方は敵国ではなく我が国の一地方だ。そしてそこを治める総督のローシュはナトゥース人であり、ホーディル家は我が国屈指の大貴族なのだ。もし、反意が確定せぬままブレスト地方を攻めれば、国に対する不審と人心の離反は避けられぬ。もしかしたらそれが火種となって、また先の大戦のように血で血を洗う戦乱に発展するかもしれぬのだ。相手に先手を取られるよりも、むしろその方がより悔いる結果になるとは思わんのか?」
「・・・・・・いえ、わかっているつもりです」
「ならばいまは待て。いずれお主にも相応の活躍の場が訪れるであろう。その時まで不必要な行動は慎むがよい」
「・・・・・・承知しました」

 内心で舌打ちをしつつ、ブラッドリーは引き下がった。アルバトロスとの実力の差を痛感せずにはいられない。彼にはそれが途方も無く不快だった。
 ブラッドリーとの話を終え、アルバトロスが改めてレミリアの方を向き直った。

「では任せたぞ、レミリア。吉報を期待している」
「はッ。承知しました。必ずやご期待に沿えるよう最善を尽くします!」

 レミリアは胸を張って敬礼を施した。自分の意見が採用され、また自分が望む展開となって彼女は満足した様子だった。
 それとは逆に、不平と不満の塊と化していたのがブラッドリーであった。自分の意見が採用されなかったからだけでなく、流血の機会も失われ、彼は苦々しい怒りを胸に溜めずにはいられなかった。

「まぁ、いい。まぁ、いまにみているがいい」

 悪意の波動がブラッドリーの瞳から漏れた。彼が不平不満を胸に秘めたまま、そのまま引き下がるような男ではないことを、アルバトロスも、そしてレミリアも、この時は失念していた。

以下、スポンサーリンク


「ブラッドリー、レミリア、双方ともそろそろ黙れ」

 静かな怒りに満ちた声をアルバトロスが吐いた。激発こそしなかったものの、若いふたりの軽率な行動に立腹している様子だった。

「ふたりとも、もういい年齢だろうが。くだらぬ痴話喧嘩を吐くよりも、実りある討論をすべきだとは思わんのか。軽率な行動は慎むがよい」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

 正論で突かれ、レミリアもブラッドリーも沈黙した。
 アルバトロスが大きく息を吐いた。

「ローシュがカードを集める真意を確かめる。レミリア」
「はッ」
「そなたの意見を是とする。ナトゥースにはようやく平和が訪れたのだ。現国王であるレイモンドが無用な争いを好まぬ以上、我らは国王の命に従うべきだ。レミリアよ、そなたは平和裏での解決を模索するといったが、なにか策はあるのか?」
「・・・・・・残念ながら、事態を根本的に解決する秘策はございません。ですが、まずは話し合いによる解決の道を模索すべきだと考えます。たとえブラッドリー卿が主張するようにアリエス姫とローシュが手を組んでいたのだとしても、平和裏に解決できる道はゼロではないはずです」

 レミリアが語っていることは極論としていえば理想論であろう。しかし、国の行く末を担っている者は決して理想論を放棄してはならない。そのことをアルバトロスは十分に承知していた。

「よろしい。そなたに任せる。強攻策はそれからでも遅くはあるまい」
「はい。わかりました」

 ここでブラッドリーが口を差し挟んだ。
 会議が自分の理想とは逆行する展開となっていささか慌てたのだ。

以下、スポンサーリンク


 | ホーム |  次のページ»»