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社会の底辺で生息している「ダメ人間」です。
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カイル・ルーの反応がやはりいまいちなのは、彼がチェザーレに対して不信感を抱いているだけでなく、さらに旧大陸という単語を聞いたからであろう。旧大陸に関して、カイル・ルーはチェザーレに関する噂同様、よくない噂を幾つも耳にしていた。
 しかし、それらの不穏な噂を差し引いたとしても、この剣が秘めた威力と魅力はそれらに勝ると思われた。
 カイル・ルーは剣を握る手に力を込めた。シュナイザーがこの剣を自分に託してくれた意味と真意を理解できぬほど愚鈍な彼ではない。視線を剣から主君に転じた時、その瞳には決意と覚悟の光がより一層輝いているようにみえた。

「必ずやメガシオンどもを駆逐してまいります」
「頼んだぞ、カイル」

 ふたりは短く別れの言葉を交わし、カイル・ルーは本陣の天幕を去っていった。その後ろ姿を見送りながら、シュナイザーは雪を降らせ続ける灰色の天を仰いだ。すでに賽は投げられている。後戻りはできない。大勢の兵士たちが死ぬであろう戦いがついに始まるのだ。人類の救済という甘美な目標を掲げた、おそらくは純軍事的にはもっとも愚かで浅はかな作戦が開始されるのだ。そのことを知ってなお、この総攻撃を止めることができず、計画の総指揮を任された自分をシュナイザーは呪った。
 だからこそ、シュナイザーは口にせずにはいられなかった。

「神よ・・・・・・どうか世界に未来を・・・・・・」

 無神論者であるシュナイザーにとってこれほど無意味な言葉はなかったに違いない。いるはずのない相手に対して吐く言葉ほど、無力で無駄なものはこの世には存在しないからだ。
 だが、シュナイザーの言葉の波動は、次元を隔てて存在しているそのモノに確かに伝わっていた。そのモノは、シュナイザーの言葉に刺激され、ほんの少しだけその巨大で矮小な身体を震わせた。その行動に気づいた者は、この世界にはただ一人だけ存在していたが、その「感情」が何によるものなのかを理解することはできなかった。
 かくして、戦いが始まる。

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「まて、カイルだけ残ってくれ。少し話がある」
「? 自分ですか?」

 他の幕僚と共に天幕を出ようとしたカイル・ルーが足を止めた。若い男だ。幕僚の中ではもっとも年齢が若く、シュナイザーよりも年下である彼は、学友としてシュナイザーに仕えて以降、二〇年間シュナイザーに尽くしてきた。剣の達人で、その強さは幕僚たちの中でも随一であり、シュナイザーに勝るとも劣らない武人である。

「カイル、おまえに渡す物があったのだ。これを持っていってくれ」

 そう言ってシュナイザーは取り出したのはひと振りの剣であった。外見はなんの変哲もない剣である。しかし、シュナイザーから渡された剣をカイル・ルーが抜き放った瞬間、銀色の刀身が光輝き、鞘の内側から淡い虹色の光が漏れた。

「・・・・・・凄い剣だ」

 剣の達人であるカイル・ルーはひと目でこの剣の凄まじさを見抜いた。これまで、数々の剣を手にしてきた彼であるが、この剣は他のどの剣と比較しても明らかに別格の力を秘めていた。

「殿下、この剣はいったい・・・・・・」
「それはチェザーレからもたらされた剣だ」
「チェザーレから」

 チェザーレと聞いてカイル・ルーはあまりよい顔をしなかった。チェザーレに関するよくない噂を彼はダース単位で知っていたからである。
 カイル・ルーの微妙な変化にあえて気づかないふりをしてシュナイザーは話を続けた。

「チェザーレがいうには、その剣はメガシオンに対して効果が期待できる唯一の武器だという。なんでも、旧大陸由来の物質でできているとか」
「旧大陸、ですか・・・・・・」

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 幕僚では最年長のカルナキア・エルストラがしみじみと呟いた。すでに孫どころかひ孫までいる年齢の彼であるが、いまだ武人としては格別の域におり、強者揃いの幕僚たちの中でも上位に位置する強さの持ち主だ。槍の達人で、放つ突きは大岩を容易く貫き、針の穴を刺せるほどの繊細さを誇る。

「カルナキアにはイタイところを突かれた。そうだな、この戦いが終わったら、真剣に考えてみよう」

 シュナイザーの苦笑めいた発言が笑いを誘った。シュナイザーは来年には三〇になるにも関わらず、いまだ妻を娶らず独身であった。皇太子であるシュナイザーは、血統の保持や皇位継承といった政治的観点からいっても結婚を真剣に考えなければならない立場にあるのだが、生活が公務優先で多忙あったことと、結婚というものに懐疑的であったことから、なかなか乗り出せなかったのだ。ちなみに、このなかで独身者は彼の他にカイル・ルーがいるだけである。
 この他、二、三私的な会話がなされ、場の空気が和んだところで、最後の会議が開催された。といっても、すでにほとんどの作戦予定が確定しているため、打ち合わせも事務的なものにすぎなかった。
 攻撃開始時刻、攻撃手順の確認、各国軍との連携、敵勢力の反撃や動きの予想など、短時間のうちに最終的な確認作業が終わり、会議は幕を閉じた。

「では、諸君らの健闘を祈る。必ず勝とう!」

シュナイザーの言葉を合図にして、幕僚たちが一斉に起立した。

「帝国万歳! シュナイザー殿下万歳!」

 幕僚たちが帝国とシュナイザーを称え、彼らは自分が率いる軍へと赴くため天幕を後にした。
その後ろ姿を黙然と見送りながら、シュナイザーはハッと思いだした。

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「何をおっしゃいますか殿下、いまの発言、殿下らしくありませんぞ。我々は殿下の部下であり、そして誇り高きエルザリオン帝国の軍人でありますれば、たとえ死ぬとわかっていても赴かなければならない戦場があります。民を守るため、国を護るため、なによりも殿下の御ためであれば、強大な敵も迫る死も恐れるものではありません!」

 豪快な風格にふさわしい豪快な発言であった。ハイドンは今年で四八になる隻眼の武将で、一八歳でシュナイザーの護衛を務めるようになって以後、ずっとシュナイザーに仕えてきた。私人としては家庭を持ってふたりの娘にも恵まれたが、公人としての責務を優先するあまり、妻とは離縁し、娘たちとも絶縁状態にある。それでもシュナイザーに対する忠義はいささかも揺るぐことのない彼だった。

「ハイドン殿のいう通りです。殿下がお気に病む必要はありません。なぜなら我々は、王宮を脱出したあの夜から、いつでも殿下のために死ねる覚悟があるのですから。ましてやいまが人類存亡の危機とあっては、いま武人としての本懐を果たさずにいつ果たせばいいのでしょうか」

 ハイドンの発言にアーバネット・マーベラスが続く。年齢は三九歳で、シュナイザーが皇宮を脱出した年にシュナイザーの護衛の任に就いてから、以来、ずっとシュナイザーの下で働いている。シュナイザーの下では主に情報の収集と分析を任されていたため、公務が多忙で長らく独身生活を送っていたのだが、昨年の初めに結婚し、そして年末には初めての子どもが産まれたばかりだった。妻子共に良好という報せを受け取っただけで、未だ我が子には会えていない。
「ただひとつ心残りがあるとすれば、殿下の子をこの目で見ることができなかった、ということでありましょうか。それが残念でなりません」

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 シュナイザーが静かに瞼を開け、意識を思考の世界から現実世界へと引き戻した。七人の軍将たちが姿勢を正して待っていた。

「・・・・・・これより最後の会議を執り行う。だがその前に、君たちに言っておかなければならないことがある」

 シュナイザーはひと呼吸おき、そして言った。

「すまない」
「?」

 シュナイザーの口から発せられた突然の謝罪を受け、幕僚たちは思わず目を丸くし、あるいは首を傾げた。誰も心当たりがなかったからだ。だがシュナイザーは真面目だった。

「君たちはずっと尽くしてくれた。自らを捨てて我がために戦い、困難な命令にも背かず従い、家族をないがしろにしてまで忠義を尽くしてくれてきた。君たちがいたからこそ、俺はここまでくることができたのだ。本当にありがとう。だから――だからこそ謝っておかなければならないのだ。これから俺は君たちに命じなければならない。確実な死が待っているであろう戦場への出撃命令を、そして待ち受ける強大な敵に対する攻撃命令を。この戦いは厳しい戦いになる。何十万人、いや、何百万人という犠牲者がでるだろう。そしてその葬列には確実に君たちも加わることになるのだ。そうと知ってなおも命令を下さなければならないことを謝らせてほしい。本当にすまない」

 謝罪の言葉を述べ、シュナイザーは深く頭を下げた。
 天幕の内に深い沈黙が訪れた。
 それを破ったのは、幕僚の筆頭格アルデラ・ハイドンの笑い声であった。

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