FC2ブログ

プロフィール

ダメ人間

Author:ダメ人間
社会の底辺で生息している「ダメ人間」です。
若くないです。もうおっさんです。
戦記ものの小説を主に書いていますので、どうぞ見てやってください。


アクセスカウンター


最新記事


月別アーカイブ


DLsite

同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com 同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com

カテゴリ


モッピー

モッピー!お金がたまるポイントサイト
ダメ人間が利用しているポイントサイトです。ダメ人間はここのモッピーワークスで文章書いて稼いでます。

ハピタス

日々の生活にhappyをプラスする|ハピタス
ダメ人間がお世話になっているポイントサイトです。生活を良くするために利用中。無害で利益があるサイトですよ

 火星でのデータ収集を終え、地球へ帰還する日、セロ・クランナーはクラハルトと最後の挨拶を交わした。

「それで、はお気をつけ、て。無事な帰還、を願っており、ます」
「ありがとう。そしてさようなら」

 互いに二度と会うことはないだろう。そしてもうこの場所に二度と地球人が訪れることもないはずだ。セロ・クランナーとクラハルトは握手を交わした。手の温もりだけが、お互いの掌に残った。
最初で最後の、それが火星の生き残りたちとのコンタクトであった。

 ――晩年、セロ・クランナーは思い悩む日が多くなっていたという。あの時、自分たちが下した結論が正しかったのか、いまだに判然としない。火星の住人たちはいまもなお待ち続けていることだろう。地球からまた、来訪者たちが訪れるであろうことを。もしかしたら自分は、もっとも愚かな結論を下してしまったのかもしれない。その後悔を抱えたまま、セロ・クランナーは八七歳で生涯を終えた。
 その翌年、セロ・クランナーの妻であるジェシカ・クランナーが一冊の本を出版した。セロ・クランナーを筆頭に、火星探査に向かった仲間たち全員の死去を確認した後に、彼女は本を書いたのだ。その本の内容が世界中に衝撃を走らせることになるのだが、それはまた、別の話である。


                                   了
同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com
スポンサーサイト



セロ・クランナーは苦渋に満ちた表情を浮かべながら、副官のジェシカに言った。

「・・・・・・俺の結論は間違っているかもしれない。だが、俺は・・・・・・「彼ら」と同じにはなりたくない」

 火星の住民たちを殺さない。いずれ基地の寿命が尽き、彼らが緩慢な死を迎えるその時まで、彼らは彼らの生活を送るべきなのだ。火星はもう、地球とは違う道を歩んでいるのだから。
 セロ・クランナーの結論を、ジェシカは受け入れた。いや、ジェシカだけではない。他の隊員たちも受け入れた。

「あなたの決断に従います」

 同族の人間を食べているとはいえ、火星の住民たちは極めて友好的であり、そして協力的だった。幼い子どもたちが地球の話を聞きたがり、大人たちは親切にしてくれる。第一三基地の内部を見て地球からの来訪者たちが同時に嘔吐した時、彼らは必死になって治療を施してくれた。火星の住人たちは善人ではないかもしれない。だが、決して悪人でもない。善悪の区別、何が正しくて正しくないのか、それを一方的な利害だけで決断することはできない。
 真実を封殺し、語らず、胸に秘めておく。
 それは悪魔の決断に似ているかもしれないが、それが四八名の調査隊が下した結論だった。

同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com
 ――それらの調査を終えたセロ・クランナーは、すぐさま調査結果を地球に送信した。一刻も早く地球側の決断が欲しかったからだ。
 報告を受け取った地球側は大混乱に陥った。死滅していたかと思われていた火星入植者たちの生存と、その狂気に満ちた歴史と生活ぶりを知って、対応に苦慮したのだ。
 そして三日三晩、不眠不休で議論が重ねられた結果、結論が下された。

「抹殺せよ。火星の住民たちを基地もろとも破壊してしまえ」

 地球は事実を隠蔽することにしたのだ。
 他の星に取り残された人類が、事故や病気、寿命によって死を迎えるのではなく、同胞を食べるという狂った進化を遂げるとは、とてもではないが公表することはできなかった。公表するにはあまりにもおぞまし過ぎる内容だった。事実を公表した場合、間違いなく今後の宇宙開発事業に支障をきたす恐れがあった。
 命令を受けたセロ・クランナーは、苦渋の決断を迫られた。
 確かに、火星の住民たちの生活はおぞましい生活に違いない。しかし、だからと言って、全て彼らに比があるとは思えなかった。人間は利己目的のために平気で同族を殺すことができる存在だ。いまもこうして、自分たちにとって不利益にならないために、火星の住民たちを殺そうとしている。それでは結局同じではないか。ただ、殺した後、食べるか食べないかの違いしかないではないか。

同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com
 当然、反対の声が上がるも、なんと賛同する者の声がより多かったのである。それらの声の主は地球出身者であり、あるいは火星で生まれながら、一度か二度、肉を食べたことがある者たちであった。肉食の欲求から逃れられなかった者たちである。
 多数決の原理によって、ジョンの提案は承認された。
 そして最初の食肉用の人間として、反対に票を投じた者たちが選ばれた。驚愕と抗議の声は封殺され、抵抗むなしく、彼らは数の暴力によって捕らえられた。その後の彼らの人生は悲惨のひと言に尽きる。人権を剥奪され、家畜同然の扱いを受け、遺伝子を操作され、繁殖のために性行為を強要され、仲間たちに食われる存在に落とされたのである。こうして火星の狂気の生活が始まったのだ。
 晩年、ジョンは言った。

「火星には二種類の人間がいる。食べる人間と食べられる人間だ」

 彼は最後の最後まで肉を食べることを渇望した。死の間際、彼が口にした食べ物は高齢者向けのペースト・フードではなく、分厚い人肉のステーキであった。彼の死因は老衰でも病死でもなく、肉を喉に詰まらせたことによる窒息死である。
 ジョンの死後も肉食の生活は受け継がれ、そして現在にいたる。火星の地獄は続いているのだ。

同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com

 だが、この事件はこれで終わりではなかった。むしろ、火星の地獄のほんの始まりに過ぎなかったのである。
 調査の過程において、興味本位で一切れの人肉を食べてしまったジョンが、なんと肉食の快感に陥ってしまったのである。火星生まれ、火星育ちのジョンにとって、肉というものは初めて口にする食材であった。どのような味か、歯ごたえか、そして旨いのか、興味本位で食べた結果だった。
 沸き上がる欲求に、ジョンの理性はたちまち敗北した。

「肉が食べたい・・・・・・もっと、もっと肉を食べたい! もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと・・・・・・!」

 いままで肉の味を一切、知らなかったジョンも、肉食の遺伝子から逃れることはできなかったのである。一度でも肉の味を知ってしまったら最後、その誘惑に理性は勝てはしない。何万年にも渡って受け継がれてきた肉食の遺伝子が覚醒した瞬間だった。
 ジョンは押収した肉を仲間たちに振る舞った。そして彼らを肉食の虜にすると、会議の席で驚くべき提案をしたのである。

「使用していない一三基地に食肉プラントを作ろう。そこで食用の人間を養殖し、みんなで食べようではないか」

 それは悪魔の提案であった。

同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com

 | ホーム |  次のページ»»