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 心の中で呟きながら、自分を除く四人の白熱した議論に耳を傾ける。大鹿村をどうにかしたい、という彼らの熱意や情熱は、白熱した議論から痛いほど伝わってくるのだが、それが成功に結びつくかといえば疑問符をつけざるをえない。計画の具体性や実現性の問題ではなく、欠けているからだ。もっとも重要な点が。

「まずはそこをどうにかしない限り、このプロジェクトを成功に導くことは難しいだろうな・・・・・・」

 そう独り言を口にしたその時だった。

「圭吾、圭吾」
「ん」
「そろそろ君の意見を聞きたいんだが、いいかな」

 視線をあげると、洋平を筆頭に、四人が自分に視線を向けていることに気づいた。
 圭吾は手にしていた資料をテーブルの上に置くと、両の手の指を静かに組み、視線を四人に固定した。その視線はまるで、得物に狙いを定めた猛禽類に似た強さがあった。

「まず、ひとつ」

 重い、迫力のある声が四人の鼓膜を震わせた。

「話を聞いていてわかったことは、あなた方の大鹿村に対する想いの強さだ。過疎化が進み、衰退していく大鹿村をどうにかしたい、という熱意と情熱の強さはよくわかった。その想いはハッキリいって尊敬に値する。だが、残念なことに、世の中には想いの強弱ではどうにもならないことが数多くあるのだ。だから、アドバイザーとして、まずはその点を改善していくことをオススメする」

 先ほどまでと打って変わった圭吾の発言を受け、洋平が半ば圧倒されながら口を開いた。

「そ、その点とは・・・・・・」

 圭吾はハッキリとした口調で告げた。

「金と、覚悟だ」

 圭吾の体内で、冬眠状態にあった活力が、ゆっくりと瞼を開けようとしていた。

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 もし、圭吾がこのプロジェクトの指揮をとるならば、それこそなりふり構わず物事を進めていくだろう。
 たとえば、海外資本を誘致して取水工場を建設させる。大鹿村は水資源が豊富だから大量のミネラルウォーターを生産することができるだろう。それらを外国に輸出すれば産業になる。村の税収は向上するし、工場の従業員として村人を雇うようにすれば、村から出ていった若者たちを呼び戻すことができるはずだ。
 少々強引な手段としては、放射能廃棄物の最終処分場として名乗りをあげるという手もある。この国の政策は、調査を受け入れた段階から莫大な交付金が支払われることになっており、それを財源として村を立て直すのだ。大鹿村が最終処分場として受け入れられる見込みがないからこそ使える方法で、金を得るのと、知名度を高める両方に使える。なにしろ大鹿村には日本最大の活断層、中央構造線が剥きだしとなって走っており、これが動けば東日本大震災以上の地震が発生すると予測されているから、とてもではないが最終処分場など造れるはずがない。
 他にも幾つか案はあるにはあるのだが、ネックとなるのが「大鹿村の美しい自然」に関してであった。
日本のチベットを自称していることからもわかるように、大鹿村はこの美しい自然に誇りを持っており、唯一の観光資源とばかりにアピールしてまわっている。現在進められているリニア建設に際しても、建設による自然への悪影響を懸念して反対運動がおこったほどで、村民は「自然」や「環境」といったキーワードに敏感に反応する。先のふたつの案は、どちらも自然や環境に影響を及ぼす方法であるから、村で受け入れてもらうことは難しいだろう。

「・・・・・・となると、とれる選択肢はおのずと限られてくるな」

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洋平が言葉を終えると、続くようにして圭吾が口を開いた。

「俺は部外者なので、後で発言させていただきます。それまでこれまでの会議録や資料を読ませてもらっていますので、みなさんどうぞお気遣いなく話をしていてください」

 実際問題として、会議に参加して欲しい云々の話は、つい二時間ほど前にされたばかりであり、いきなり意見を求められても話しに困る。まずはそれなりの情報を集める必要があった。
 圭吾という部外者がいることで、最初のうち、参加者たちは緊張してか、なかなか意見を言い合おうとはしなかったのだが、それでも一五分もすると緊張もほぐれ、議論に熱がこもってきた。三〇分も経過すると沈黙したままの圭吾の存在は完全に蚊帳の外に置かれ、さらに時間が経つと完全に忘れさられたようであった。
 これ幸いとばかりに、圭吾はその間、彼らの議論に耳を傾けながら、用意された会議録や資料に目を通した。「大鹿村振興プロジェクト」と銘打たれたそれらの資料には、マスコットキャラクターの新設、物産品や特産品を振る舞っての首都圏でのピーアール活動、大鹿村キャラバン隊の結成、観光客の誘致など、どこかで見たことがあるような文言が並んでいた。
 圭吾は思わず苦笑しそうになった。

「こんなことで過疎の村が元気になると本当に思っているのかな」

 と、思わずにはいられない。
 もし、この資料に記されている案で過疎の村が救えるなら、もうとっくの昔に過疎化の問題は日本から消失しているはずである。圭吾からすれば、これらの案はどこかの町村がすでに実施した振興策の焼きまわしであって、しかも大多数が失敗に終わったという悪しき前例でしかない。

「やるならもっと大胆にやるべきなんだ。でなければ、とてもではないが過疎化した村を救うことはできん」

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「お久しぶりです、小野山さん。ええ、わりと元気にしてますよ」
「そうか、それはなによりだ。で、おまえさん、いまは何をしとるんだ?」
「一年前に務めていた信託会社を辞めましてね、いまは無職です」

 無職という単語を聞いて、小野山村長の顔が少し曇ったが、すぐにもとの表情に戻り、再び圭吾の肩を叩いた。

「そうか。まぁ、人生には充電期間も必要だ。もし新しい仕事先が見つからなかったら、その時は村に戻ってくるといい。おまえならどこでも大歓迎さ」
「ありがとうございます。まぁ、考えておきますよ」

 小野山村長の他、圭吾は母親がお世話になった人や顔見知りの人たちに挨拶をしてまわり、それから会議室のドアを潜った。
しばらく待つことになったが、それは長い時間ではなかった。会議に参加するメンバーが続々と集まってきたからだ。役場の職員である大林智弘、村の消防団で団長を務める山岸徹、Iターンで大鹿村に移住してきた群馬県出身で陶芸家の北野幸太郎、そして農業兼デイサービスセンター勤務の白鳥洋平である。小さな村の小さな組織にふさわしい人数であり、年齢層は二十代から四十代と、村では比較的若い部類の者たちが集まった。

「えーと、それでは第六回目の振興委員会の会議を開催したいと思います。ですが、その前に、彼についての紹介をしたいと思います」

 そう前置きをしたうえで、洋平の口から圭吾に関する簡単な説明がなされた。村の出身者であること、現役で東京大学に進学した秀才であること、抜群に頭が良いこと、それらを考慮したうえでアドバイザーとして意見を聞くためにこの場に招いた旨が伝えられた。

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「おい、それはいくらなんでも急すぎるだろう。事前の情報をもらっていないどころか、会議に参加する下準備もできていないぞ」
「いや、まさか本当に来てくれるとは思っていなくてさ。すまん。でも、君なら大丈夫だよ。なんたって抜群に頭がいいんだからさ」

 あっけらかんとした口調でいう洋平を横目で見て、圭吾は小さく息を吐いた。

「・・・・・・まぁ、いいさ。急な用件は慣れっこさ」

 という訳で、圭吾はその会議に参加することになったのであった。

 飯田駅から約一時間、ひたすら山道を走った末、洋平が運転する軽トラックは大鹿村の境を越えると、そのまま大鹿村振興委員会の会議が開催されるという大鹿村役場に到着した。小さな村にふさわしい小さな役場であり、山間の村にふわさしく、すぐ目の前には山がそそり立っている。
 役場の入り口を潜ると、入ってきた圭吾の姿を見て、幾人もの職員が驚いた顔をした。母親が役場の職員だった影響もあろうが、それとは別に、圭吾が村ではかなり名が知れた人物だったからでもあるだろう。県内でも有数の進学校である伊那北高校に通い、東京大学に現役で合格したという経歴は、小さな村では英雄に近い知名度を誇る。その英雄が数年ぶりに帰還したのだから、人々の興味と耳目を集めるのはある意味、必然といえた。

「おお、久しぶりだな、圭吾! 何年ぶりだろうな。元気にしてたか!」

 そう肩を叩きながら豪快に声をかけてきたのは、母親のかつての同僚であり、現在は村長を務める小野山忠弘であった。六二歳とまずまずの年齢だが、高齢化が進む大鹿村ではまだ若い方である。

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