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実際、大鹿村を訪れた観光客のリピート率は、他の観光スポットと比較して低い水準にある。
 それらを踏まえたうえで、圭吾はさらなる説明を重ねた。

「大鹿村の観光資源は、他の観光地と比較すると見劣りすること甚だしい。だが、それでも、現段階でも観光客は招こうと思えば招くことはできるだろう。そのひとつの方法がむりやり「ブーム」を作ることだ。映画、アニメ、ドラマ、漫画、小説などの題材として大鹿村を取りあえげてもらい、話題を提供して人々の耳目を大鹿村に集中させることができれば、万単位での観光客が大鹿村を訪れるだろう。だが、所詮「ブーム」は一過性であって、恒久的に大鹿村を活性化させることにはつながらない。ブームによって一時は活気づいたとしても、ブームが去ってしまえば大鹿村はまた以前の寂れた状況に戻ってしまうだけだ。それではダメなのだ。それでは、大鹿村を再興することにはつながらない」

 では、どうすればいいか。

「そこで会社のふたつ目の事業へとつながってくる」
「ふたつ目の事業?」
「そう。会社の収益の柱とし、村の名前を県内外に知らしめ、なおかつ恒久的に話題を提供することが可能な方法――それが「コミック事業」だ!」
「・・・・・・はい?」

 社長の洋平を筆頭とした四人の表情が、疑問の二文字を浮かべたまま硬直した。

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 大鹿村には幾つかの観光スポットがある。日本最大の活断層、中央構造線をメイン展示物とした大鹿村中央構造線博物館、昭和三六年に発生した大災害「三六災害」の犠牲者を慰霊し、村の復興を期してつくられた大西公園、豊かな自然が育まれている赤石岳、大鹿村の昔の暮らしを今に伝えるろくべん館、村の史跡に認定されている松下家、南北朝時代に端を発する古い歴史を持つ小渋温泉、海水とほぼ同じ成分の鹿塩温泉などだ。また、村での最大級のイベント事としては、「大鹿村騒動記」という映画の題材にもなった大鹿歌舞伎というものがある。これは一七六七(明和四)年に端を発する地芝居で、国選択無形民族文化財の指定も受けている大鹿村で独自の発展を遂げた歌舞伎である。毎年、春と秋に二回公演がおこなわれ、そのつど県内外から多くの見物客が集まっている。いずれも大鹿村を代表する観光資源だ。
 だが、いずれの観光資源も、日本全国に数多くある観光スポットと比較した場合、見劣りすること甚だしい。全国規模で有名というわけでもなく、特筆すべき点もなく、ましてや世界遺産や国宝に指定されているわけでもない。あえて「行きたい」と思えるような観光スポットがないのだ。その上、交通の便も悪い。大鹿村は、「日本のチベット」と呼ばれるような辺境の地にあるため、道に不慣れな者にとってはそれこそ「冒険」と呼べるような曲がりくねった山道を通らねばならず、行きも帰りも地獄のドライブを強いられる。そのため、なんらかの情報を得て大鹿村に興味を持ったとしても、躊躇ってしまい、

「一度は行ってみたいけど、別にわざわざ行く必要もないよね」

 という結論に達することが多いといわれている。

 そんな親友の心境など露も知らず、洋平は「社長」と呼ばれることに対してもかなり気恥ずかしい様子であるようだった。苦笑いを浮かべたまま、なかなか次の言葉をつむぎだそうとしなかったのだが、それでも意を決したように、ぽつぽつと語りだした。

「・・・・・・あ、いや、いま話を聞いていて思ったんだが、大鹿村の周知を目指すなら、特産品じゃなくて観光に力を入れた方がいいんじゃないかな。大勢の観光客を招くことができれば、特産品も売れるし、村全体も活性化するだろうし、なによりも知名度もアップするんじゃないかな。で、その段取りをこの会社でおこなえば、手数料とかも入るんじゃないだろうか」

 ああ、なるほど――という声が聞こえた。あまりにも小さすぎて誰が発したか定かではなかったが、少なくとも、圭吾が発したものでないことは確かだった。圭吾は洋平の話を聞いて、二度、三度と頷いてみせたが、口は閉じたままであったからだ。

「良い意見だ。さすがは社長だな」
「褒められた気がしないんだけど・・・・・・」
「まぁ、褒めてはいないからな。だが、目の付け所は間違ってはいないぞ。観光客の誘致は、最終目標のひとつであるからな」

 大鹿村が有名になり、県内外から観光客が怒涛のごとく押し寄せ、村にお金を落としていってくれるということになれば、それはもう、村の活性化が大成功を収めたといってよい事態である。だが、実際問題として、そのような状況が訪れることは、いまの段階ではありえないだろう。

もちろん、それに伴って商品の選別を強化し、品質の向上を目指していくことが求められるが、それらは決してクリアできない課題ではない。より高い収益を求め、そして得るためには、努力を怠るような真似は決してしてはならない。これはどんな職業にも通じる、いわば真理だ。

「在庫がある程度、確保できた段階で、この計画を発動させる予定だ。また、この件に関しては、引き続き山岸氏と北村氏にお願いしていくつもりなので奮起をよろしく頼む。もちろん、ふたりとも本業を優先してもらって構わないが、くれぐれも生産者の方をないがしろにするような真似だけはしないでくれ。彼らあってのプロジェクトなのだからな」

 うなずく山岸と北村の姿を確認して、圭吾が次の話に移ろうとした時だった。洋平がおずおずと手を挙げた。

「あ、あの、ちょっといいかな・・・・・・」
「なんでしょうか、代表取締役」

代表取締役と呼ばれて、洋平が恥ずかしそうな表情を浮かべる。

「や、やめないか、その呼び方。なんか身体がムズムズするんだけど・・・・・・」
「じゃあ社長だな。で、なんでしょうか、社長」

 名目上、立場は代表取締役である洋平の方が上なのだが、現状は異なっている。能力、経験、実績など、どれをとっても圭吾のほうが上であったから、洋平が単なるお飾りの傀儡に過ぎないことは誰の目にも明らかである。ただし、五年後、一〇年後もこの関係が続くようでは、会社のためによくない。ゆえに、圭吾としては、なるべく早い段階で洋平に自覚をもってもらい、力をつけ、会社を取り仕切る人材になってもらいたいと考えている。いまのところはまだ難しい段階だが。

「あなたの指示通り、リストにあった特産品は扱えるように手配した。しかし、どれも絶対的に量が足りない。これでは、取り扱っても、大して売ることができないし、あまり収益にもならないんじゃないかな?」

 北村が口にした不安に呼応するように、他の三人が無言で頷く。圭吾も頷いたが、これは同調の意思を示したものではない。

「なるほど、その不安はもっともだ。だが、それは裏を返せば、やり方次第でいくらでも状況を改善することができる、ということでもある。大切なのは発想の転換だよ」

 圭吾は説明した。集めた特産品は、いままでのようにそのまま市場に卸すことはしない。四人が不安に思っているように、そんなことをしても大して売れないし、利益にもならないし、宣伝効果もあがらないし、なによりも絶対に数が不足しているから、人々の興味や関心に結びつかない可能性が高いからだ。それに第一、大鹿村の特産品は、お世辞にも全国的に有名とはいえないから、そもそも普通に卸したのでは取り扱ってくれる店舗すら見つけることは困難を極めるだろう。では、どうすればいいのか。

「卸す先を限定する。そして一般には手に入らないようにする。流通する量を操作し、稀少価値を高め、付加価値を伴わせ、より高い値段で販売するようにする。主なターゲットはホテル、料亭、星付きのレストランなどだ」

 そのための準備はすでに整っている。親しい付き合いがある幾つかの各種料理店に話をつけており、山塩は神楽坂の料亭、ジビエはフランス料理の専門店、ブルーベリーは洋菓子店、はざかけ米は関東近辺のホテルなどに卸していく予定だ。

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