ジークからカードを受け取ったエリアスが呪文めいた言葉を口にしはじめた。

「トルク・レトム・ナザフ、アグル・ケルド・フフル、サブル・ナブサ・レムド、アルガ・レホマ・セドラ・・・・・・」

 それはいままで聞いたことがない言葉であった。聞いているだけで背筋に悪寒が走り、不快感で全身の毛が総毛立つような言葉だ。普段、自分たちが口にしているナトゥース語とは明らかに違う。否、大陸の他のどの国の言葉とも異なっている異質な言葉だ。まるで、異なる文明形態によって成立したとしか思えない言葉だった。

「まさか、な・・・・・・」

 超常の古代帝国の伝説をディルクは信じていない。そんなものは狂人の妄想であって史実ではない。そう思っている。
 だからこそ・・・・・・信じていないからこそ、目の前で発生した異常事態に驚かずにはいられなかった。
 エリアスが静かに言葉を終えた。

「・・・・・・出でよ、猿魔鬼・ゴユグルグ」

 突如、何も無い空間に赤い光を放つ魔方陣が出現した。
 そしてその魔方陣を裂いて出現したのである。
 背中に蝙蝠のような翼を持ち、ゴリラ以上の巨躯を有する、赤い目を爛々と輝かせた凶暴な形相をした巨大な猿が、だ。

「オギャアッ! オギャアアアアアアアアアアッ!」

 産声のような咆哮を発し、巨大な猿の化け物がエリアスの前に立ちはだかった。自らを召喚した彼女を、まるで母親として慕うかのように。

「な、な――ッ!」

 部屋にいる男たちは誰もが例外なく驚いた。ディルクは驚愕で目と口を大きく開けたまま硬直し、ジークは畏怖と狂喜を混ぜ合わせたような表情で絶句し、ローシュにいたっては腰が抜けたのか座り込んでしまい、失禁までしている有様だ。誰もが非現実的な光景に驚かずにはいられなかった。

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「あの・・・・・・ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか」
「なんでしょう」
「あなたは先ほど、これまでの経緯を話すなかで自分には「力」があるとおっしゃった。それは発揮すれば一国を制圧できるほどの「力」だと。その「力」がどのような「力」であるか、もしよろしければ教えていただけないでしょうか」

 ジークはもともと貴族出身であり、王家や宮廷に関する様々な秘事に精通している。ゆえに、エリアスの会話の一端から、なにか思い当たる節があったに違いない。
 ジークの質問に対し、エリアスは一瞬、沈黙した後、口を開いた。彼女なりに考えて、話すべきだと結論したのだろう。おもむろに話だした。

「私が有している力・・・・・・それは、超常の古代帝国が残した遺物を用いて魔物を召喚し、使役する力です」
「! やはり! その遺物とは、このカードのことではないですか?」

 半ば叫ぶように言いながらジークが取り出したのは、以前、とある城を攻め落とした時に応酬した戦利品の中に混ざっていたカードだった。あの時以来、ジークはお護り代わりとして持ち歩いていたのだ。
 エリアスが静かに頷いた。

「はい、それです。そのカードのことです」

 ジークが色めき立った。狂喜の感情を爆発させ、人目もはばからず、驚きと喜びの叫び声を上げて身を乗り出す。

「本当ですか!? 信じられない! もし、可能であるならば、いまこの場にてこの魔物を召喚してみてください。もし本当に召喚できれば、その力は大きな戦力になる!」
「わかりました。私の力を端的に示すためにも、ぜひともやらせてください」

 ふたりのやり取りを聞いてディルクは呆れた。

「おいおい、本気か? 勘弁してくれ、まったく」

 と内心で思いつつも、口にはださない。超常の古代帝国に関する伝説など、彼は信じていないからだ。だから好きにさせたのだ。どうせそう時間を取ることなく済むだろう、そう考えて。

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 エリアスは密かに動いていた。侍女たちを手なずけ、自分を監視する兵士たちを篭絡させ、王都への報告に虚偽を混ぜて油断を誘った。その作業に半年の時間をかけた。

「叔父よ、いまにみているがいい・・・・・・」

 エリアスは心の中で叫んだ。
 自分を殺さなかったことを後悔するがいい、と。
 エリアスには力があった。いまこの場では発揮できぬ力だが、その力を使えば一国をたやすく制圧できるほどの力だ。
 その後、エリアスはわずかな側近たちと共に隙を突いて古城を脱出し、各地に身を隠しながら逃避行を続け、王国の領土をほぼ横断する形でブレスト地方へと逃げてきた。ブレスト地方を治めるローシュの助力を得るために。

「・・・・・・以上が、私が王位奪還を目指すにいたった理由です」
「なるほど。随分とご苦労をされたようで、その心中、察するにあまりあります」

 話を聞き終え、ディルクがうやうやしく低頭した。端から見れば心から相手を同情し、思いやっているように見える。しかし、内心で吐露した本音は口にした言葉とは裏腹のものであった。

「なにが王位奪還だ。結局、この娘は自分が叔父に先手を取られたことが悔しいだけじゃないか。単なる逆恨み、否、わがままだ。これではたとえ王位を奪い取ることができたとしても、長く維持することはできないだろうな」

 だが、この好機を利用しない手はない。エリアスは前国王の娘で、王位の継承権も保有している。この二点だけでも十分に利用する価値がある。偶然にも懐に飛び込んできたこの幸運、存分に活用させてもらうとしよう。

「この娘を利用する。そして王国に破壊と滅亡をもたらしてやる」

 悪意を込めてディルクがそう結論づけた時だった。
 後ろに控えていたジークが声を発した。

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 戦闘が勃発し、そして半時とかからず終結した。
エリアスを支持していた王族や貴族たちはほぼ全員が殺害された。そして彼らの象徴であったエリアスは捕らえられ、王都から遠く離れたグライス山の頂上にある古城に幽閉されることとなったのである。
レイモンドはエリアスを送り出す際、その出発に立会った。

「本来であれば命を奪って将来への禍根を根絶することこそが最良の策なのだろう。だが、姪の命を奪うは忍びない。ゆえの追放措置だ。国の平和と安定のため、受け入れてくれるとありがたい」

それが叔父の別れ際の言葉であったが、エリアスからしてみればたまったものではない。自らが預かり知らぬ間に事が勃発し、いきなり身分を剥奪されて自由を奪われたのだ。屈辱と怒りの炎を両眼にたぎらせながら、エリアスは内心で誓いを立てた。

「いまに見ているがいい・・・・・・」

 必ずや叔父を王位から引きずり下し、王位を奪還してみせる。
そう決意して、エリアスは王都を去った。
 古城での生活は決して悪くはなかった。エリアスの居住区域は改装されて豪華な調度品が用意されたし、身の回りの世話をする侍女たちもダース単位で揃えられた。食事の量と質は王宮のソレと比較して遜色のない物が提供されたし、冬場は一日を通して火が焚かれ、飢えや寒さとは無縁の生活が送れるよう配慮されていた。書物も、絵画も、美術品も、楽器も、宝石も、望めばすぐに用意された。時には著名な演奏家や有名な道化師が古城を訪れ、娯楽の提供にも事欠かなかった。
レイモンドとしては姪が古城で穏やかに暮らしていけるよう配慮したのだろう。だが、エリアスは憎悪を膨らませる一方だった。
 ある日、エリアスは信頼する侍女に語ったことがある。

「私は優雅な生活を営む飼い犬より、名誉ある野良犬としての道を選ぶ」

 驚いた侍女はそのことをエリアスを監視している衛兵に報告すべきか迷ったが、結局は胸にしまっておくことにした。姫の信頼を裏切れない、という気持ちが強かったからだ。それにこの職を失えば実家への仕送りが出来なくなってしまう。エリアスが覗かせた唯一の隙は、こうして表ざたになることを防がれたのである。

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 選王会議を開催するにあたって両勢力の舌戦は紛糾した。

「次期国王は前王の一人娘であられるエリアス様が就くのが妥当だ。なぜならば、姫こそが正当な王位継承者であるからだ」
「否! 血統のみで王位を保てるものではない。実績・名声ともにレイモンド閣下は他の王族方の追従を許さぬ。それになにより、姫はまだお若い。今回は国のためを思って自重すべきではなかろうか」
「若き姫君を王位に推戴し、我ら臣下一同が下から支えることによって、国政の安定を図るべきだ」
「強力で有能な君主こそ、いまの我が国にとって必要なお方だ!」
「エリアス姫こそが王位にふさわしい!」
「いや、レイモンド閣下こそだ!」

 王族や大貴族などが集まって開催された選王会議は、招集から半月が経過しても方向性が定まらず、対立するばかりで拉致があかない。そのうちにどちらにも過激な一派が出現し、相手方の謀殺を図ろうとした。相手方の擁立者を亡き者にすることによって、自らが支持する者を王位に就けようとしたのである。
 これに先制した対処をくわえたのがレイモンドであった。王位を巡り、王国が二分する大乱に発展することを防ぐために、彼はあえて覇道を進むことを選択したのだ。
 王国暦三二〇年一一月一日、レイモンド一派によるエリアス一派への攻撃がくわえられた。攻撃に参加したのは先年、一介の傭兵団から正規の騎士団に取り立てられたレイモンド直属の騎士団・トゥナイゼル騎士団である。作戦の立案は内密に進められ、そして遂行された。
一一月一日の深夜、エリアス一派は王宮の一角にて今後の行動に関する会議を秘密裏に開催していた。集まっていたのは王族のルトルド公爵、大貴族のバラモン侯爵、銀行の経営者であり資産家のルブル伯爵など、総勢二三名の有力者たちである。エリアスはいなかった。彼らにとってエリアスは担ぐための御輿であってその実力や人格にはなんら期待していなかったからだ。エリアスが持つ真の価値など知らずに。

「レイモンド一派を武力によって打倒すべきだ!」

 会議にてその声が大勢を支配するにいたったが、時すでに遅かった。トゥナイゼル騎士団が総力を挙げて王宮を攻撃し、乗り込んできたのである。

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「私がいまこの場にいる理由は、ブレスト地方の総督であるローシュ殿にぜひ協力していただきたかったからです。ローシュ殿のお父上であられる前総督は我が父の遠類にあたる方。そして無二の友人でもありました。ゆえに、ローシュ殿なら私に力を貸してくださると思ったからです」
「なるほど・・・・・・して、その協力の内容とは?」
「叔父である現国王レイモンドの打倒、そして彼からの王位の奪還です」
「!」

 全員、目が丸くなり、絶句してしまった。姫の過激な提案に対し、ディルクのみならず、ジークも、そしてローシュも驚きを隠せない様子だ。
 三人の中で真っ先に驚きを鎮めたディルクが姿勢を正した。そして問いかける。

「・・・・・・しかし、なにゆえの王位奪還なのですか? レイモンド王の治世は極めて安定しており、巷では彼のことを名君と呼ぶ声も多いとか。あえていま、平穏な世を破壊するような愚挙である王位簒奪を目論む理由を、願わくばお聞かせいただけますか?」
「王位のだ・っ・か・ん・です」

 ディルクの言葉を強い口調で訂正しながら、エリアスはディルクに視線を合わせた。ディルクがこれまで見た視線のなかで、姫の視線はもっとも強い視線だった。決意の二文字がそのエメラルド色の瞳に宿っているようだ。

「いいでしょう。なぜ私が王位奪還を目指すのか、その理由をお答えいたします」

 ・・・・・・話は三年前まで遡る。エリアスの父親である前国王マイモンドが病に倒れ、ほどなくして没した頃だ。
 当時、王宮では次期王位を巡ってふたつの勢力が対立していた。ひとつは王弟であるレイモンドを支持する一派であり、もうひとつが王女であったエリアスを指示する一派だ。

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「総督殿、あちらのご令嬢はどなた様ですか?」
「えっと、その・・・・・・」

 ディルクの問いに対しローシュは戸惑った。正直に答えるべきか否か、彼なりに考えたのだろう。
 その努力を無駄としたのが問題の娘自身であった。椅子から立ち上がると、気品溢れる優雅な動作で一礼し、身分を明かしたのだ。

「名乗らせていただきます。私の名は、エリアス・バルエット・リグエス・ナトゥースと申します。以後、お見知りおきを」
「・・・・・・ナトゥース?」
「はい。私は、ナトゥース王国前国王マイモンドの娘であり、この国の正当な王位継承者です」
「! まさか・・・・・・」
「ほ、本物の姫様!?」

 柄にもなくディルクが驚き、追従するようにジークも驚いた。
 ふたりが驚いたのも無理はない。マイモンド王の娘エリアスといえば、マイモンド王の死の直後から消息不明とされてきた人物だからである。陰の噂によれば、自らの王位継承を正当化するために叔父であるレイモンドによって暗殺されたとされていたが、まさか生きていたとは! いや、それよりも、なぜここにいるのか。さすがのふたりにとっても想像を超えた出来事であった。

「いったい、どういうことですか?」

 ディルクは思わずローシュを見た。明確な回答は期待できそうにないことは承知していたが、問わずにはいられなかったのだ。

「えっと、その、あの・・・・・・」

 案の定というべきか。問われたローシュはどのように説明すれば良いかわからぬ様子で口ごもってしまった。何か言いたい様子だが、それをどのように表現すればよいのか、自信欠乏症のローシュにはその手段が欠落しているのだ。

「その質問に対しては私の方から答えさせていただきます」

 不甲斐ないローシュに代わって口を開いたのは当事者たるエリアス姫であった。彼女は、ローシュの一万倍ほども落ち着いた態度を保ったまま告げたのである。

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 総督ローシュは執務室で待っているとのことで、ディルクとジークはまっすぐそこへと向かった。金と銀の刺繍が施された無駄に柔らかい赤い絨毯を歩くこと五分、ふたりは執務室に辿りついた。

「ローシュ総督、ディルクです。お呼び出しを受け、参りました」

 扉を叩き、そう告げると、中ですぐに反応があった。

「ま、待っていたぞ、ディルク。それにジーク。さぁ入っておくれ、相談したいことがあるんだ」

 扉が開き、現れたのは、背が低く、栗色の髪の毛が印象的なまだあどけなさが残る少年であった。表情には自信が乏しく、動きが挙動不審で落ち着きがない。声には覇気がなく、心の弱さが内側から滲みでているようだ。彼こそがディルクの傀儡である若き総督ローシュその人である。
 一体何事が生じたのであろうか。内心で首を傾げつつも、ディルクは深く考えず執務室に足を踏み入れた。
 足を踏み入れて、気づいた。
 室内に人がいたのだ。
窓際の椅子に座っていた。若い、そして美しい娘だった。
大きな瞳はまるで大粒のエメラルドのように美しく、日差しを浴びて輝く金色の髪は黄金でできた繊維のようであり、肌は処女雪のように白く、身体は細くしなやかだった。端整な顔立ちはキリッとしており、可憐さよりもむしろ意思の強さを感じさせた。いままで女性に心を動かされたことなどなかったディルクであったが、その娘を見て、自らの内心に芽生えた動揺に驚きを禁じえなかった。
 だが、本能よりも理性が働いた。
 ディルクは心の動揺を悟られることなく押し殺し、代わりに打算と計算による観察をはじめた。娘の肌は純白で美しいが、所々汚れている。長い髪も手入れがされておらず、何十本かの髪が刎ねている。よく見ると、全身に薄っすらと傷や痣の痕が見受けられた。そしてなにより気になったのは、娘が着ている服だった。彼女は囚人服を着ていたのだ。

「訳あり、か・・・・・・」

 ディルクは瞬時に見抜いた。相当な厄介者だな、と長年の勘が告げている。しかし、なにも気づかない振りをしてローシュに問いかけた。

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「申し上げます。ローシュ総督からの使者が参りました。大至急、お二方に総督府に来ていただきたい、と。詳しいことは聞いておりませんが、なんでも、重大な問題が発生したそうで・・・・・・」

 報告を受け、ディルクとジークは苦笑し、肩をすくめてみせた。

「やれやれ、またか」

 というのがふたりの率直の感想であった。ローシュを傀儡としたは良いのだが、その結果、彼は少しでも問題が生じると自分の力では解決しようとせず、全てをディルクとジークに委ねてしまう惰弱な体質と成り果ててしまったのである。どうでもいいような相談が多いため、多少、わずらわしくあるのだが、だからといって無下にできない。間違って下手な対応をされては、それはそれで困るからだ。

「敬愛する総督殿からのお呼び出しだ。行くとしよう」
「さて、今回はどんな悩み事を相談されるのやら」

 ディルクもジークも軽い気持ちで席を立った。またいつものことだ、そう思って。だが、この呼び出しがまさか彼らの運命を加速させることになろうとは、この時はまだ想像すらしていないのであった。


          *


 ブレスト地方を治める総督府はクローレンツのほぼ中央に位置している。名はクローレンツ城、またの名を「光の城」と呼ぶ。
この城は、要塞としての防衛機能よりも、居住性を無視した豪華さを追及した造りとなっており、外部からの光を内部に取り入れるために無駄に多くの窓が設置され、建物の中には故意に広い空間が設けられて解放的な造りとなっている。床や天井は匠たちの手によって描かれた壁画で埋め尽くされており、装飾品には水晶をはじめとする多種多様な宝石類の他、金や銀といった貴金属が大量にもちいられていて、外から差し込む光を浴びて幻想的な輝きを放つのだ。光の城と呼ばれる由縁である。城の内部には千人を収容できる劇場や一〇〇人が一度に会食できる会食室、巨大な地下金庫室、数十万冊の書物を収納した図書室、各種行政機関の執務室、さらには築材に琥珀のみが用いられた貴人専用の客室などがある。宿泊した者はみな一様に感嘆するそうだ。

「戦火に巻き込まれたら一瞬にして全てが奪い尽くされそうな城だな」

 とは、総督府に足を踏み入れるたびに思うディルクの皮肉な感想であった。この城が敵陣の根拠地であったならば、ディルクなら間違いなくそうするだろう。

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「先の戦乱の伝手を使って、属国や隣国との間に関係が構築できないか検討してみようか? ナトゥースを憎む国は決して少なくないからな。グロネリアあたりだったら、秘密裏の共闘工作が可能かもしれないぞ」

 ジークが空になったグラスに白ワインを注ぎながら呟く。肉が苦手な彼であるが、酒類に関してはディルクと比較にならぬほど強い。すでに赤や白のワイン瓶が数本、空になっているが、表情も言葉遣いも素面そのものだ。

「いや、外国との関係を構築しようとするのであれば、ナトゥース側の警戒網に引っかかる可能性がある。この国も馬鹿ではないからな。不穏な動きは決して見逃さないだろう。ブレスト地方が躍進した背景にディルク兵団の存在があることはすでに知られているだろうから、あまりにも目立ち過ぎる行動はまずい」
「だとすれば王国の中央との繋がりが必要になってくるな。王族か、あるいはそれに準ずる大貴族との間に繋がりを持つことができれば、中央の動きを牽制することができるかもしれない」
「ホーディル家の人脈を活用するか。ローシュを傀儡とし、幾らかの財宝を献上すれば、ある程度の関係を築くことができるだろう」
「だったら近日中に名簿を作成しておくよ。中央での影響力を持つ王族や貴族たちの名簿をな」
「よろしく頼む」

 一定程度の方向性を経て、ふたりの会話が終了しようとした時だった。
 ゴンッ、ゴンッ。
 扉に設置されている呼び鐘が重い音を響かせた。続いてディルクとジークを呼ぶ声も聞こえてきた。

「団長殿、副団長殿、いまよろしいでしょうか?」

 声の主は室外で待機している警備の団員のものだった。フキンで口元を拭いながらディルクが答える。

「構わんぞ、入ってきてくれ」

 入室の許可を得た団員が一礼して入ってきた。

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プロフィール

ダメ人間

Author:ダメ人間
社会の底辺で生息している「ダメ人間」です。
若くないです。もうおっさんです。
戦記ものの小説を主に書いていますので、どうぞ見てやってください。

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