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Author:ダメ人間
社会の底辺で生息している「ダメ人間」です。
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「そんなことをすればこの国が、世界がどうなると思っているの! あの化け物がこの世界に侵入したら、それこそ取り返しがつかなくなる! 大勢の人が死ぬ! あなたはそんなことになっても平気なのッ!」
「それがどうしたッ!」

 ディルクの雷喝がレミリアの心を貫いた。正気が駆逐され、狂気がディルクを支配していた。溢れんばかりの怒りと憎しみが、怒気と憎悪が、悪意が、ディルクという人間の形を保っていた。
 狂気の咆哮が世界に響く。斬撃の豪雨と共に。まるでこの世界に害を成そうとする怪異のごとく、ディルクは人間でありながらこの世界が滅びることを望んだ。

「どうせこのままではナトゥースに勝つことなど出来ないのだ! だとしたら、あの化け物をこの世界に引き入れ、その力を持ってナトゥースを滅ぼしてやる! 何万人、何十万人、何百万人が死のうが知ったことかッ! 俺は、どんな手段を使ってでもナトゥース王国を滅ぼしてやるッ!」

 ナトゥース王国を滅ぼすための算段はあった。そして現にそれは半ばまで成功しつつあった。だが、あの化け物の出現によって計画は完全に頓挫したと言って良いだろう。拠点であるクローレンツは壊滅し、主力となるディルク兵団と民兵団は崩壊しつつあり、そして戦力の切り札であった魔物たちをことごとく喪った今、このままではどう足掻いてもナトゥース王国に勝つことはできない。ならば根本から計画を修整すべきであろう。たとえ人外の存在の力を利用してでも勝利を優先すべきなのだから。そのためにはなんとしてでもレミリアが持つカードを奪略する必要があった。

「あの化け物は奪われた子供たちを探し続けている哀れな母親だ。そして子供たちはカードに封印されてなお、微弱ながら母親を呼び続けている。ゆえにそのカードをナトゥース全土にばら撒けばどうなると思う? カードを求めて、あの化け物はナトゥース全土で暴れまわるはずだ。全身に怒りをたぎらせてな! ナトゥースは滅びるのだ!」

 もはや過去にあった事象のごとく目に浮かぶ。あの化け物に蹂躙され、国全体が廃墟と化すナトゥースの姿が。実に胸が空く光景だ。

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 レミリアは怪異に仔らを返すためにカードにしまっていたカードの束に手を伸ばした。その瞬間である。レミリアを殺害しようとディルクが斬りつけたのだ。鋭い金属音がして、アイテルの剣がディルクの剣を弾いた。
 顔を驚愕に染めながらレミリアが叫んだ。

「なんのつもり、ディルク!」
「知れたこと。貴様を殺し、そのカードを奪うつもりだ!」
「なっ・・・・・・!」

 驚いたレミリアは言葉を失った。そんなことをすればどのような結末が訪れるのか、怪異の考えを知ったからこそレミリアは想像ができた。ナトゥース王国の滅亡、そして世界の終焉。おおよそ考え得る最悪の結末が訪れるはずだ。だからレミリアは叫んだ。ディルクが怪異の考えを「知らない」と思ったから。

「聞いて! ディルク! あの怪物の目的は自分の子供たちを助けだすこと。子供とはカードに封印されている魔物たちのことなの。だからカードを渡せばあの怪物はもと居た世界に戻――」
「知っているさ、そんなことは!」

 レミリアが言い終えるよりも早くディルクが答えた。そして答えると同時にレミリアとアイテルに対する攻撃行動を再開した。
 ディルクの剣が斬撃の暴風雨となってふたりに襲いかかる。一撃、一撃が必殺の攻撃であり、並の騎士や戦士であればただの一撃で絶命を余儀なくされるほど強力な攻撃の連続だ。アイテルは必死になって耐え続けたが、耐えることだけが精一杯だった。自分の身と、何よりもレミリアを護ることだけで手一杯であり、とてもではないが攻勢に立つことができない。ディルクが叫んだ。

「だからこそ貴様を殺してカードを奪うのだ! あの化け物をこの世界に解き放つために!」

 ディルクの斬撃がアイテルの防御を越え、レミリアに届いた。しかしレミリアは、抜き放った自らの剣でその一撃を受け、辛うじてその命を守った。一撃を受けただけで手が痺れ、思わず剣を落としてしまいそうになるほどの攻撃だった。

「・・・・・・ッ!」

 歯を食いしばりながら辛うじて剣を取り落とすことを防ぐと、レミリアは感情に任せて叫んだ。叫ばずにはいられなかった。

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「ワわあああァあアァあぁアアアあアァああァ、タたタアアァあアアアァああァァアあぁアアぁぁぁ、シシシィいぃィイいイぃィイイィィイィぃぃィい、ノのオォおぉオォおオォオおォぉおぉぉおォォオオォ、ここココこおぉオォォおぉオォォおおぉオォォオ、ををヲヲヲをヲをヲヲヲをヲをヲヲ、カカかアアあぁアアァァアァアあぁアぁアアァァあぁ、ええエエぇェえぇエェエェえぇェエえぇエェェえエェ、セエエェエええぇェエェぇエエぇえェエェッッッッ!」

 巨大な瞳がギョロリと動き、天空から下界を見下した。その視線の先に怪異が求めるモノがあったからだ。憎悪に満ちた視線が人間たちを貫いた。

「・・・・・・・・・ッッッ!」

 怪異の視線をまともに受けた人間は三人いた。ディルク、レミリア、そしてアイテルの三名である。この三名は、周りで敵味方を問わず兵士たちがバタバタと意識を喪う中、強靭な精神力を発揮していまだ意識を保っていたのである。
 ゆえにだろうか。
 だからこそ、視線を通じて、怪異の思想や思考が脳内に直接、流れ込んできたのである。それは落雷の命中に似た衝撃であった。
 怪異はこの世界とは異なる世界に棲む存在だった。本来であれば決して交わることのない世界だ。時間軸も、法則も、あるいは摂理にいたるまで、全てが異なるその世界において、怪異は永遠に等しい悠久の時間を自らが産んだ仔と共に過ごしていた。
 その平穏を破壊したのが超常の古代帝国エリューシオンであった。
 エリューシオンの人間たちは超常の技術を駆使して「世界の境界」に小さな穴を開け、そこから次々と怪異の仔らを拉致していった。
 怒り狂った怪異は自分を呼ぶ仔供たちの鳴き声だけを頼りに「世界の境界」を破壊すると、仔供たちを助けだすために暴れ狂った。
 怪異がこの世界に侵入してきたことはこれまでに二度あった。
 一度目はエリューシオン末期、皇位継承の大戦争の際、皇兄派と皇弟派の両軍がガスバルトの大決戦で戦力として魔物の軍勢を大量に召喚した時だ。この時、怒り狂った怪異の破壊によってエリューシオンは滅亡し、大陸全土が灰燼に帰した。
 二度目はナトゥース建国時である。ナトゥースの初代国王アルジャーノ一世が自らの力を誇示するため大量の魔物を召喚した時、その鳴き声に導かれて怪異が出現した。そして王都は一夜にして壊滅したのである。
 そして三度目が今であった。討伐軍をトドメを刺すために、大量の魔物を召喚したことによって怪異が呼び寄せられてしまったのだ。
 理由を知って三人がほぼ同時に動いた。

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 戦闘総指揮所が崩壊した頃、戦場ではエリアスが言った通りの事態が進行していた。
 支配が解けた魔物たちが次々と戦場を離脱し、上空へと向かって進み、空に開けられた穴の中に吸い込まれるように消えていったのである。彼らはどれもこれもが嬉々としていた。まるで長い間、この瞬間を待ちわびていたかのように。そして魔物たちは一匹残らずいなくなった。
 魔物たちが消え、戦場には人間たちだけが残された。
 片手で頭を抑えながらディルクが呻いた。

「なぜだ・・・・・・これは・・・・・・」

 小鬼が脳に直接手を突っ込んでかき混ぜているような激しい頭痛がする。上下が逆さまになってしまったのかと錯覚するようなめまいや至近距離で大砲が連続して爆発したかのような耳鳴りもだ。全身を襲う倦怠感と圧苦痛に耐えながら、ディルクは叫んだ。叫ばずにはいられなかった。

「いったい、どういうことだ・・・・・・!」

 順調だったはずだ。なにもかも。
 ブレスト地方で勢力を拡大し、力を蓄え、団を強化し、各地への影響力の扶植を進め、王国に反旗を翻し、ブラッドリー率いる討伐軍を撃滅せしめ、そして今まさにレミリア率いる討伐軍との戦いにも勝つ寸前だったはずだ。にも関わらず、なぜこうなってしまったのか。問わずにはいられなかった。

「アレか・・・・・・アレのせいか・・・・・・」

 睨むような視線でディルクは見た。空間を割り、この世界への侵入を試みようとしている巨大な怪異を憎々しげに見た。害であり、悪であり、敵としか思えないアレはいったいなんなのだろうか。アレはいったい、なにが目的なんだ。
 巨大な怪異はなおも叫ぶ。
 人間たちを威嚇するように、憎悪と悪意と敵意を込めて、世界に轟くような咆哮で叫びまくった。

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特に多数の死者が続出したのがクローレンツの住民たちであった。世界に怪異の異音が響くつど、老人や子どもたちを筆頭に絶命を余儀なくされたのだ。路上で、あるいは家の中で、多くの者が自分がなぜ死ななければならないのかわからないまま死んでいった。この死者の列にブレスト地方の総督であるローシュが加わっていることを、戦後、生き残った者たちは知る。

「も、申し上げます・・・・・・市内各所で、死者が続出しています・・・・・・ど、どうやら、この音にやられた、ようです・・・・・・」

 ふらふらになりながらも、戦闘総指揮所に辿りついたひとりの伝令がクローレンツ城内の様子をジークとエリアスに報告した。ふたりとも、命は奪われてはいなかったものの、吐き気やめまいで意識が混濁する寸前の状況にあった。

「くそっ・・・・・・おのれ・・・・・・」

 まるで、脳を直接、ノコギリで切り刻まれるような感覚にさらされながら、ジークは呻いた。この事態をなんとかしなければ何もできないまま全滅を余儀なくされる。ジークは怒鳴るように叫んだ。

「エリアス・・・・・・あの化け物だ、あの化け物を・・・・・・魔物を使って攻撃するんだ・・・・・・早く・・・・・・」
「だ、ダメ・・・・・・なの・・・・・・」
「な、なに・・・・・・?」

 悶え苦しむエリアスの返答を聞き、ジークはほんのわずかに身を起こした。

「せ、制御、できないの・・・・・・魔物たちが、私の支配下から・・・・・・解き放たれていくの・・・・・・」

 耐え難い苦しみがエリアスを襲う。頭が割れそうな感覚に襲われ、神経が末端から磨り減っていくようだ。そしてその苦痛は、ついにエリアスが許容できる苦痛の範疇を超えてしまったのである。ブツリ。エリアスの中で何かが音を立てて切れ、崩壊した。

「あは、あはは、あははははははははははははははッ!」

 突然、エリアスが狂ったように笑いはじめた。否、本当に狂ってしまったのだ。精神の限界を超え、神経が途切れ、正気を保つことができなくなったのである。エリアスは白目を剥いて大声で笑い、そして踊りはじめた。狂気が彼女の全身を支配していた。

「エ、エリアス・・・・・・」

 けたたましい哄笑を発し、髪を振り乱しながら錯乱するエリアスの姿を見ながら、ジークの意識がゆっくりと闇の中へと落ちていった。彼の最後の言葉は「ちくしょう」という悪態であった。

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「カカカカアァァああぁぁァァァアアアエエエエェェェエェェエェエェェェェェェセセセぇエェエエエエェェえええええェェッ!」

 それは鼓膜を引き裂くような超高音であり、心臓をワシ掴みにするような重低音であった。人間では、否、この世に存在するありとあらゆる生物でも発声することは不可能と思えるような音を巨大なる怪異は放ったのだ。
 その音を聞いた瞬間、馬たちは恐怖のいななきを発して暴れだし、人間も耳をふさぎながら絶叫して転げまわる者が相次いだ。無秩序が戦場を支配した。意思の弱い者や気が弱い者は泡を噴いて失神し、そうでない者も身体を無意識のうちに震わせて歯をカチカチと鳴らしていた。自分が何を叫んでいるのかもわからず、むやみやたらと絶叫する者も多い。意識を喪わずとも白目を剥き、気がふれて先ほどまで味方だった者に斬りつける者さえいた。ただ、カードから解き放たれた魔物たちだけが空に向かって歓喜の鳴き声を発していた。オギャア、オギャアと、まるで母親を慕う赤子のように。
 さらに空が砕け、青空に開いた穴が広がる。その間から滲む暗黒が領域を広げるつど、こちらの世界へと届く恐ろしき声が、その強度を増して人間たちの耳に届く。悪意に満ちたその声は、人間たちをさらなる恐怖と恐慌の渦中へと叩き込んだ。

「カカカああアァァァアアァァアァアァアアええええエエエエエエエエェェエェエェェェエェセエぇぇエェエエェェぇぇェエエッッッ! かかカカカアアアぁあぁアアアアァァあエエエええぇぇェェエエええぇエせエエエェェエェエェエええェェぇぇッッッ! カカカカアアアァァァあぁああぁアアアァァエエェェええぇぇぇえエエェェえセええぇエエェェェェエエェェエェェエェッッッ!」

 おぞましき、そして恐ろしき音が響くつど、人間たちがバタバタと倒れてゆく。失神ではなく、心臓が停止した者が相次いだのだ。心が弱い者、気が弱い者、あるいは臆病な者たちから順に命を握りつぶされていった。

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 その異変に最初に気がついたのは、戦闘総指揮所で戦況を見極めていたジークであった。望遠鏡でもって戦場の様子を確認し、味方の優勢と勝利を確認して笑みを浮かべた直後、何かが砕けるような音を聞いて望遠鏡から目を離した。

「なんだ、いまの音は?」

 その音はジークだけでなく、そばにいたエリアスも、近くにいた護衛や伝令の兵士たちも同じく聞いていた。

「なんなの、いまの音は?」

 エリアスも怪訝な表情で辺りを見回す。まるで厚いガラスの窓にヒビが入ったような音だったが、戦闘総指揮所にそのような物はない。いったい、何が砕けたというのだろうか。
 彼らと同じように異音を聞いた者は大勢いた。後方支援にあたっていた民間人たち、陣に留まり守備に徹するよう命じられた民兵団残留部隊の兵士たち、そして戦場で殺戮に狂奔する反乱軍の兵士たちや虐殺されつつあった討伐軍の兵士たちもその異音を耳にしていた。当然、ディルクも、レミリアも、侍従騎士のアイテルも、その音を聞いて思った。
 いったい、なんの音だ?
 と。
 一瞬、世界が異様な静寂に包まれたような気がした。
 そして誰となく空を見上げた時、人間たちは気づいた。青い空の一部が砕け、ひび割れ、割れ目から漆黒の闇がのぞいていることに。そして人々は気づいた。その闇の中で爛々と巨大な瞳を輝かせながら、巨大な爪で割れ目をさらに広げ、こちらの世界への侵入を試みようとしているおぞましき怪異の存在に。

「な、なんだ・・・・・・あれは・・・・・・?」

 戦場では戦いが止まっていた。攻勢を強めていた反乱軍も、劣勢に立たされていた討伐軍も、そして猛烈な勢いで人間たちを喰らっていた魔物たちも、戦うのを止め、呆然とした表情で空を見上げた。まさに攻撃を仕掛けんとしていたディルクですら、目の前で進行している異常事態に驚愕せずにはいられなかった。
 そして再び空が異音を発して砕けた時、おぞましき、そして恐ろしき声がこの世界に響き渡ったのである。

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魔物たちが討伐軍に襲いかかった。首を牙でもって喰い千切り、鋭い触手で胴を貫き、身体を力任せに引き裂いて血を浴びるように飲み、巨体でもって踏み潰し、生きたまま内臓を引きずりだして鼓動を刻む心の臓を握り潰した。肉片だけになった死体が散乱し、その数は分単位で、あるいは秒単位で確実に増えていった。

「殺せ! 殺せッ! 殺し尽くせッ!」
「オギャア、オギャアッ! オギャアッ!」
「血祭りだ! 皆殺しにしろ!」
「オギャアアアアアッ! オギャアアアアアアッ!」
「ディルク兵団万歳! ディルク団長に勝利と栄光を!」
「オギャ、オギャ、オギャアアアアアアアアアアアッ!」

 人魔一体となって破壊と殺戮の限りを尽くす反乱軍に対し、討伐軍はもはや成す術がなかった。ただ一方的に襲われて殺された。自らの生命を護ることすらままならず、ただただ悲鳴を上げて逃げ惑い、そして殺戮された。
 この状況下において、レミリアは大混乱におちいった軍を立て直すべく奮闘を続けていた。大声で指示を出し、残っていた各指揮官たちに命令を出しながら、自らも剣を抜いて戦いに備える。その最中、彼女は迷っていた。エリューシオン・カードを使うべきか、否か。いや、もはやこの戦況を覆すためには使わなければならないことはわかっている。頭ではわかっているのだ。だが、理性が頑なに歯止めをかけていた。
 エリューシオン・カードを使えばこの世に災厄をもたらす。
 エリューシオン・カードを使役するにあたって叩き込まれてきた歴史が理性の鎖となってレミリアを拘束していた。
 だが、もはや悩む必要はなかった。人間の形をした災厄がレミリアの目の前に到来したからである。全身を血で真っ赤に染め上げたディルクが現れたのだ。

「討伐軍の指揮官、レミリアだな」
「ッ!」

 ただならぬ強敵の気配を感じてか、侍従騎士のアイテルがレミリアの前に立ちはだかった。仮面でその表情は見えないが、おそらく緊張が走っているはずである。それはレミリアも同様だった。

「おまえは・・・・・・」
「喋るな」

 ディルクがぴしゃりと言った。

「何も言うな。何も聞きたくない。貴様の死をもってこの戦いを終幕とさせてもらう。だから速やかに死ね」

 そう言ってレミリアに襲い掛かかろうとした直後である。

 バキンッ。

 世界が壊れる音がした。
 そして人間たちは思い知る。天と地の狭間には、人間の哲学では考えることさえ不可能な領域と存在があることを。

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 敵とはすなわちレミリア率いる討伐軍のことである。魔物たちはレミリアの命令を受けて動きだした。ある魔物は複数の翼をばたつかせ、またある魔物は百を越す足を高速で動かしながら、魔物の大群が討伐軍めがけて殺到する。絶望が到来した。
 この光景を目の当たりにして討伐軍から恐怖と恐慌に満ちた悲鳴が上がった。当然といえば当然といえよう。彼らは反乱軍と違ってエリューシオン・カードの存在と詳細を指揮官から聞かされていなかったのだから。

「な、なんだあの化け物の群れは!」
「夢か・・・・・・? これは夢なのか・・・・・・?」
「なんなんだ! もうなんなんだよォッ!」
「神様、助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 完全に戦意が喪失した討伐軍から絶望の悲鳴が生じた。
 上空から化け物の群れが飛来し、そして地上からは人間の姿形をした災厄が殺到した。ディルクに率いられた反乱軍が襲いかかってきたのだ。

「蹂躙せよ!」

 命令は忠実に実行に移された。無数の馬蹄が討伐軍将兵たちを蹴散らし、踏み砕く。刀槍が縦横に振るわれ討伐軍の兵士たちを次々に血祭りにあげてゆく。首が剣で切断され、胴が槍で貫かれ、背中に無数の矢が浴びせられる。血飛沫を上げ、悲鳴を上げ、背中を向けて逃走を図る敵兵をディルク兵団は容赦しなかった。戦意無き敵を屠ることに対して彼らは微塵の躊躇すら抱かなかった。

「殺せ! 殺し尽くせ!」
「同情は無用だ! 情けはもっと無用だ!」
「敵を殲滅せよ! 皆殺しにしろ!」

 いまや討伐軍は蹂躙されるだけの哀れな存在と成り果てていた。
 人間の敵だけでも厄介な相手なのに、その上、絶望が具現化した魔物たちまで襲ってくるのだ。討伐軍にはまだ一〇万以上の将兵たちがいたが、その数はもはや組織として機能していなかった。指揮官をことごとく失い、相次ぐ敗北によって戦意を喪失した兵士の存在は、武器をもった木偶人形にすぎない。戦場では戦いなどではなく一方的な殺戮が展開されただけであった。

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 一方のジークとエリアスである。戦闘総指揮所にてディルクからの伝令を受け取ると、その真意を理解して行動に移った。

「敵が――レミリアが魔物を召喚するよりも早く、こちらが魔物を召喚して決着を図る。やはりディルクも同じことを考えていたか」

 頷き、ジークはエリアスを見た。
 エリアスが頷いた。

「さっそく召喚にかかるわ。これでトドメね。さようなら、レミリア」

 エリアスは貴金属がちりばめられた小箱からカードを取り出すと、それを卓上に並べ、召喚のための呪文を唱えはじめた。

「フフス・ラパト・クラム、ガフト・パスラ・テスラ、ギアブ・サブフ・ゼブラ、カハト・ガバド・グルス、エルベ・スタム・シトラ、ゲフト・ガパト・レペト、プトラ・キハク・ゼムラ、ラパト・アハト・ナハト・・・・・・」

 戦場に異変が生じた。
 空中に光り輝く魔方陣が生じたかと思うと、そこから次々と凶暴で凶悪で獰猛な異形たちが姿を現したのである。エリューシオン・カードに封じられていた魔物たちがエリアスによって解き放たれたのだ。

「オギャア、オギャア、オギャア、オギャアッ!」
「オギャアアアアア、オギャアアアアアア、オギャアアアアアアアアッ!」
「オギャ、オギャ、オギャ、オギャ、オギャ、オギャ!」
「オオオオオオオオオギギギギギギギギギギヤヤヤヤヤヤヤヤヤアアアアアアアアアッ!」
「オギャアアアアオッ! オギャアアアアオッ! オギャアアアアオッ!」

 まるで産声のような咆哮が戦場に満ちみちる。空中がおぞましき魔物たちの群れで埋め尽くされた。海洋性軟体生物に蝙蝠の翼が生えた化け物や奇怪な肉の触手が絡み合った怪物、生物化した鉱物のような存在や胴体全てに目がある昆虫など、おおよそ名状し難い魔物たちがこの世に現れた。まるで幼い子どもが夢で見る悪夢のような光景だ。これら全てがエリアスが召喚者であるエリアスの下僕であり、彼女の意に沿って動くのだ。
 エリアスが魔物たちに念じた。

「敵を殲滅しなさい」

と。

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