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Author:ダメ人間
社会の底辺で生息している「ダメ人間」です。
若くないです。もうおっさんです。
戦記ものの小説を主に書いていますので、どうぞ見てやってください。


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お知らせ

日頃からお世話になっております、ダメ人間です。
いつも当ブログ「幻造戦記」を訪問していただき、まことにありがとうございます。
とりあえず、個人的なことですが、来月から新年度になるにあたって、ダメ人間の勤務がエライことになっており、4月一杯は「ダメ人間」としての活動が難しくなりそうです。そのため、日頃から色々とお世話になっている方々には大変申し訳ないのですが、連絡がつきにくい日がかなり出てくると思われますので、この場をお借りして先に謝罪させてください。

現在、ブログで掲載している「カードdeダンジョン前編」は引き続き連載を続けていきたいと思います。
オリジナルカードゲームの方は、水面下で進んでおりまして、決定的な段階になりましたら、またブログの方で告知していきたいと思っております。一応、まだ記事にはしていないのですが、保有していたダメ人間のコレクション類(化石やら鉱物やら)を売り、若干、資金が出来ました。この件に関しましては、また今度、くわしく報告させていただきたいと思います。

そんな感じのお知らせでした!
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「愚かモノめ・・・・・・」

 ヴァン・クロイツァーが渾身の斬撃を放った。その攻撃は、横合いから彼を喰らおうと近づいた怪物の頭部に炸裂したのである。

「じゅぐりゅらるらあふあああぁぁぁ・・・・・・」

 意味をなさぬ奇怪な叫びが生じ、怪物が姿を現す。頭部が完全に両断されている。それは明らかに致命傷であった。
怪物はしばらくの間、奇怪な悲鳴を発しながら巨体を無秩序にくねらせて暴れていたが、やがて動かなくなった。頭部の目もすべて光を失っており、怪物がもはや生きていないことは明らかだった。

「・・・・・・」

 ヴァン・クロイツァーは無言で剣を鞘に収めた。報復を遂げたという満足感はない。あるのは仲間を助けられなかったという虚無感だけであった。
 ヴァン・クロイツァーは、しばらくの間、立ち尽くしていたが、やがて方向を転じて歩きだした。死んでいった仲間たちの死を少しでも意味あるものとするためには、彼が動かなくてはならない。成果を持ち帰り、探索を成功させるのだ。
 ヴァン・クロイツァーは廃墟となった町へと足を踏み入れた。スピルヘータが語っていた、エルフールに関するなんらかの情報を探し出すために。
 だが、町で彼を待ち構えていたのは絶望だった。

「カロロロロロロロ!」
「ジュララララララ!」
「ヴァルルルルルル!」

 町に入った途端、ヴァン・クロイツァーは無数の怪物たちに周囲を取り囲まれた。その数は三〇から四〇ほど。もしかしたらもっといるかもしれない。全て人型で、姿形は同一形態をしているが、体長は二テーラーから五テーラーと幅があり、体色も紫色の個体がもっとも多かったが、金色の個体や、黒色の個体もいる。名前は知らないが、この町がこの怪物たちの領域であることは明らかだった。
 ヴァン・クロイツァーは大きく息を吐いた。

「一難去ってまた一難か・・・・・・」

 ため息混じりに呟きながら、ヴァン・クロイツァーは剣を抜き放った。両眼に覚悟の決意を漲らせて。

「来いよ、化け物ども。全員まとめて相手になってやる!」

 咆哮が生じ、戦いが始まった・・・・・・。

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 怪物の巨体はヴァン・クロイツァーからすれば巨大な標的そのものである。ましてや激痛によって隙ができた最中だ。時間に換算すれば一秒に満たぬわずかな時間であったが、その間に、怪物の身体には無数の深い亀裂が刻まれた。
ヴァン・クロイツァーが斬撃を放つ。立て続けに放ち続ける。一切の容赦もなく、慈悲もなく、それは一方的な攻勢だった。怪物の身体は硬い鱗で覆われてはいたが、ヴァン・クロイツァーの技量をもってすれば薄紙同然であったといえる。ヴァン・クロイツァーの攻撃が炸裂するつど、怪物の身体には深い亀裂が生じ、青い血が溢れだす。激痛が走るつど、怪物は悶え、身をよじり、敵の攻撃を回避しようと身体を動かすが、ヴァン・クロイツァーの斬撃から逃れることができない。途中、怪物は反撃に転じ、巨大な顎でもってヴァン・クロイツァーをひと飲みにしようと試みたが、その刹那、斬撃が走り、右側に生えている腕が二本、切断された。

「じゅららららららららららららあああぁぁぁッ!」

 仰け反り、悲鳴のような咆哮を発する。それは悲哀に似た叫びであった。
怪物は巨大であり、俊敏であり、そして醜悪な様相をしていたが、その内実が巨大な蛇そのものであると敵に理解されてからは、哀れのひと言に尽きる。未知に対する恐怖がなくなったいま、怪物はもはやヴァン・クロイツァーの敵ではなかったからだ。

「痛いか、化け物? 恐ろしいか? だがな、おまえに食われた仲間たちは、もっと恐ろしかったと思うぞ」

 傭兵団に拾われてより二〇年、その間、ヴァン・クロイツァーはずっと戦場で戦ってきた。そしてこれまでに幾度となく死の危険にさらされながらも、そのつど生きながらえてきた理由は、彼が口にするように「悪運」だけが要素ではない。ヴァン・クロイツァーが持つ類稀な力――戦いの力こそが、彼を今日まで生かしてきた最大の要因だった。

「しゅらららら・・・・・・」

 自分よりもはるかに矮小な敵に圧倒されながらも、怪物はまだ戦いを諦めたわけではなかった。深手を負いつつも、戦うための余力はまだ残されていたのである。
 怪物が身体の体色を周囲の景色に同化させていく。姿を消し、気配を断って、ヴァン・クロイツァーへの反撃を試みようとしているのだ。
 だが、いくら体色を周囲の景色に同化させたといっても、すでに負っている傷や流れでている血まで一緒に同化することはできない。見えてはいないが、怪物の姿はまる見えだった。

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「・・・・・・」

 ヴァン・クロイツァーは、自分がなぜ生きているのか、もはや理解できなかった。自分よりも生きるべき価値を有する人間は他にも大勢いたのに、彼らはみんな死んでいき、自分はたった独りまだ生きている。
 だとしたら、自分も死ぬべきなのだろうか。

「・・・・・・・・・・・・否」

 という結論に達した瞬間、ヴァン・クロイツァーの体内から、恐るべき力が湧きあがってきた。それは猛烈な意欲であり、憎悪であり、怒りだった。この理不尽な世界に対する強烈な復讐心であった。
 自分は生きている。自分は生かされた。だとしたら、自分は生きている意味を見つけ、生き続けなければならない。死んでいった仲間たちの死を無駄にしないためにも、この大陸から生きて帰らなければならない。

「しゅらららららら・・・・・・」

 怪物が、残っていた得物を喰らおうと方向を転じた時、その瞳に映ったのは、先ほどまでのひ弱そうな生き物ではなかった。猛獣――いや、それ以上の怪物へと変じていた人間だった。
 次の瞬間だった。
 ヴァン・クロイツァーは、恐るべき速度で剣を抜き放つと、なんの躊躇もなく怪物に斬りかかったのである。それは一切の迷いがない斬撃であり、必殺の攻撃だった。
 怪物の身体に灼熱が生じた。それは深い亀裂のような傷であって、傷口から青い血が噴水のごとく噴出している。怪物の身体は金属を彷彿とさせるような硬い鱗によって覆われていたが、ヴァン・クロイツァーの斬撃はその硬度を凌駕していたのだ。

「じゅららららららッ!」

 悲鳴のような咆哮を発し、怪物が悶えるように身をよじる。どんな怪物であれ、痛覚を持つ生き物であれば、激痛は精神の均衡を崩すには充分な要素となる。怪物に生じた隙をヴァン・クロイツァーは見逃さなかった。

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だがその時、後ろから肩を押されて、ヴァン・クロイツァーの身体がぐらりと揺れた。何者が彼を押したのか、明白だった。

「死ぬな、ヴァン」

 と、声が聞こえた気がした。
 ヴァン・クロイツァーが思わず後ろを振り返りそうになった瞬間、黒い巨大な影が高速で彼の隣を通過していった。そしていまひとりを丸飲みにしたのである。

「・・・・・・ッ!」

 その瞬間が、ヴァン・クロイツァーの目には恐ろしいほどゆっくりと映っていた。
 旧大陸へ来る航中、船上で親しくなったジャン・ピエールは、ヴァン・クロイツァーに自らの夢を語ったことがある。医者である彼は、これまでにルドリア全土の僻地を渡り歩き、ろくな治療も受けることができない貧しい人たちを診てきたという。
ルドリアは、国是として平等を謳ってはいるが、その実態は一部の特権階級と権力者が優遇される社会構造となっており、都市部と地方では貧富の格差が激しいのだという。地方でも農村部の状況がより深刻で、農家は国に外貨獲得のための政策作物の栽培を強制された挙句、それを安い価格で買い上げられているため、地方では貧困が蔓延して困窮状態にあるのだという。なかでも特に深刻なのが子どもの貧困で、食うに食えなくなった農家では、子どもの売買が横行し、口減らしのための子殺しや、餓死や病死が相次いでいるのだという。
 ジャン・ピエールは、その状況を憂い、今回の探索に参加することを決めたそうだ。獲得した金で養児院を建設し、貧しい子どもたちを餓えや貧困から救うために。
 だが、ジャン・ピエールは死んだ。夢を叶えることなく、いや、夢の階を踏むことなくだ。それもヴァン・クロイツァーという生きていても死んでいても社会になんの影響ももたらさないような人物を助けて。

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全長が一〇テーラーを超える巨大な蛇のような怪物――そう、森の中で探索団を襲撃し、壊滅に追いやった化け物が、ヴァン・クロイツァーらの前に再出現したのだ。
 ヴァン・クロイツァーが再び呻いた。

「こいつ・・・・・・後をつけてきたのか・・・・・・」

 不覚にも気配に気づかなかった。いや、逃げるのに夢中で、それどころではなかったというのが実際のところだ。しかし、こうなるとそれは致命的な失敗だったといわざるをえない。

「しゅらららららら・・・・・・」

 巨大な蛇の怪物が、大きな口を開け、舌を舐めまわしながら奇怪で不快な音を発する。上顎部から生えている人間のような四本の腕が、まるで軟体動物を彷彿とさせるかのような動きで奇妙に動きまわっており、五つの頭部にある一〇個の目玉は、そのすべてがヴァン・クロイツァーとジャン・ピエールに向けられていた。次の標的を定めたのだ。
 怪物の身体がゆらりと揺れた。それは極めて流動的な動きであり、水流を彷彿とさせるような滑らかさであった。
 咄嗟にヴァン・クロイツァーが咆えた。

「逃げろ、ジャン・ピエール! 町の中に逃げ込むんだ!」

 それは覚悟の咆哮だった。ヴァン・クロイツァーは、自分の身を盾にして仲間を護ろうとしたのである。
 刹那の瞬間、ヴァン・クロイツァーは剣を抜き放とうとした。立ち向かうためである。しかし、怪物の方が遥かに俊敏であった。巨大な口を目一杯開け、ヴァン・クロイツァーをひと飲みにしようと襲いかかってきたのだ。その感の時間は、体感にしてゼロコンマゼロ秒以下の時間であったが、勝敗を決するには充分過ぎる時間であった。

「・・・・・・!」

 ヴァン・クロイツァーの目には世界が止まって見えた。そして彼は自分が死んだと思った。怪物の動きは速かった。速すぎた。自分の攻撃は間に合わない。回避は不可能。自分の運命はここで終わったと思った。

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 スピルヘータの情熱的な演説を受け、ジャン・ピエールが立ち上がった。まだ完全に回復した様子ではなかったが、彼は立ち上がるべき理由を承知していたからだ。

「だとすれば早くしよう。私たちの手元には、水も食料もほとんど残ってないんだ。調べるなら、早い方がいい」

 彼の言う通り、三人の手元にある水と食料は、非常用として携行していた一日分だけである。人間は二、三日であれば飲まず食わずでも死ぬことはないが、そんな底力を期待するほど三人は愚かではなかった。

「よし、決まりだな。早いとこ成果を見つけ、ここを離れよう。できれば日が沈む前に」

 陽が沈み、辺りが暗くなれば、危険の度合いは格段に増す。そうなる前に船に戻ることこそ最善だと考えるからだ。ヴァン・クロイツァーの言葉に対し、ジャン・ピエールは深く頷いて同意し、スピルヘータは立ち上がることによって賛同の意思を表明した。こうして三人の意思の統一はなされたわけだが、直後、状況が暗転する。

「よし。それじゃあ行こうか」

 スピルヘータがそう宣言した直後だった。
 ばぐん。
鈍い音がして、スピルヘータの上半身が消えた。何事が起こったのか。次の瞬間には、残った下半身が宙へと浮きあがり、まるで虚空に飲み込まれるようにして消えていったのである。それは既視観がある光景だった。

「ま、まさか・・・・・・」
「あ、ああ、あああ・・・・・・」

 ヴァン・クロイツァーが震えた声で呻いた。同時に、彼は無意識のうちに剣の柄へと手を伸ばしていたが、足は気持ちに反して後ろへと下がっている。隣にいるジャン・ピエールは、恐怖のあまり意味をなさない声を発し、動くことすらままならず、立ち尽くしたままだ。これから何が起こるか、ふたりはすでに理解していた。
 ふたりの目の前で、ソレが擬態を解き、姿を現した。

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 探索団に参加した者たちは、六人の班長たちは別にして、他はなんらかの理由で金に困り、しかたなく参加した者たちばかりである。女に騙されて多額の負債を負った者、親族の借金返済を肩代わりした者、銀の取引に失敗して娼館にとられた妻と娘を取り返そうとしている者、孤児に対する支援を画策している者、そして病気の妹の治療費を稼ごうとした者など、みんな様々な事情があってここまでやって来て、そして死んでいった。ゆえに、彼らの死を無駄にしないためには、鎮魂の祈りを捧げるのではなく、何かひとつでも成果を持って帰れるよう努力すべきなのだ。

「・・・・・・わかった、この町を調べていこう。しかし、こんな大陸の端にある小さな町に、チェザーレが求めるような成果があるだろうか」

 ヴァン・クロイツァーがふともらした不安を、スピルヘータは首を振って否定した。

「その心配はいらないだろう。かつてこの大陸を支配していた大国エルフールは、現在の我々よりも遥かに進んだ文明を有していたといわれている。ゆえに、日常生活で使われていた何気ない小さな品であっても、我々にとっては同じ量の黄金よりも遥かに高い価値を持っている場合だってあるはずだ」
「なるほど」
「それに、人が住んでいた場所だからこそ得られる品もある。記録だ。もし、エルフール崩壊時の様子を克明に描写した日記とか公的な書類とかを発見することができれば、なぜ旧大陸がこのような惨状にいたったのか、その理由を知ることができる。そうなればきっとチェザーレも狂喜するだろうよ」

 先ほどまでの疲れを感じさせないほど、スピルヘータは饒舌だった。話す声にも若干の熱が含まれており、彼が旧大陸に対して並々ならぬ興味をもっていることは明白だった。おそらく彼は、金のためではなく、純粋に旧大陸に対する「興味」が燃料となってこの探索に参加したのだろう。

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もし、この仮説が正しいとすれば、自分たちは砂浜とは反対側の方向に来てしまったということになる。しかし、結果として、自分たちの位置を把握することができた。そのことがヴァン・クロイツァーにとっては幸いだった。

「場所の把握ができた。砂浜へ戻ろう」

 ヴァン・クロイツァーは後ろを振り向いた。彼はすぐに引き返すことこそ賢明だと判断したわけだが、彼の後ろにいたジャン・ピエールとピローゼ・スピルヘータは、疲れ果て、地面に座り込み、苦しげな呼吸を肩でしていた。強靭な肉体と体力を持つヴァン・クロイツァーと違って、学者肌のふたりは、すでに心身ともに限界を超えていたのだ。
 座り込んだまま、水を飲みながらジャン・ピエールが絞るように声をだした。

「す、少し休ませてくれないか・・・・・・ひ、久しぶりに走ったから、足が限界で、もう動けないんだ・・・・・・」

 その言葉にスピルヘータが続く。

「そ、それに、このまま戻ったとしても、なんの成果もなければ、船には乗せてもらえないぞ・・・・・・。だ、だとすれば、少しこの町を調べていかないか? 少しでも成果を持って帰ることができれば、死んでいった仲間たちの死も無駄にはならないはずだ」

 一理ある、とヴァン・クロイツァーは思った。
探索の参加者たちには、報酬として金貨千枚が提示されているが、これは成功報酬であって、任務を達成し、生きて帰れた時のみ有効な契約である。しかし、例外があって、たとえ探索中に死亡または行方不明となったとしても、探索団全体でなんらかの成果が得られた場合は、指定した遺族に金貨三百枚が支払われることになっているのだ。つまり、極端な話、誰かひとりでも成果を持って生きて帰ることができれば、探索団全員がある意味で報われるというわけだ。ちなみに、ヴァン・クロイツァーが指定した遺族は、戦友のロンバルドであった。

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 ・・・・・・木々が林立し、雑草が生い茂る深い森の中を、ヴァン・クロイツァーは、生き残りのふたりを連れて前へと走っていた。その顔には苦渋の表情が浮かんでいた。
「まだ半日・・・・・・いや、三時間も経っていないのに・・・・・・」
 正確には一時間と四八分で、三時間どころか二時間も経っていないのだが、たったそれだけの短時間で、団は壊滅に追いやられ、ヴァン・クロイツァーも生死の境に立たされている。上陸する前は想像すらしていなかった状況だ。

「なんとか・・・・・・なんとか船に戻らなければ・・・・・・」

 もはや探索などできる状況ではない。生き延びるため、ヴァン・クロイツァーはすでに船へと戻ることを決めていたが、最悪なことに、彼は戻るべき方向を見失っていた。手元には方位磁石があったが、ぐるぐると回っているだけで役に立たない。この場合、無闇やたらに走りまわるのは得策ではないが、立ち止まれば新たな脅威にさらされかねないという不安がヴァン・クロイツァーの胸中には渦巻いており、それが彼を走らせたのだ。まずはこの森を抜け出すことが先決だ――そう考えて。
 ヴァン・クロイツァーの努力は報われた。しばらく走った後、森を無事に抜け出すことに成功したからである。
 ただしそこは、上陸した砂浜ではなく、草木が一本も生えていない不毛な荒野であった。その荒野のど真ん中に、遺跡があった。
朽ちた城壁、崩れかけた塔、そして城門だったであろう巨大な穴から見えたその先には、無数の家屋らしき残骸が散らばっていた。かつては「町」と呼ばれていたであろうその遺跡を見て、ヴァン・クロイツァーは呟いた。

「・・・・・・そうか、あの森は砂防林だったのか」

 おそらくあの森は、この町を海から吹きつける塩や砂から守るために人工的に造られた森だったに違いない。もちろん、最初からあれほどの規模ではなく、もっと小さかったのだろうが、数百年という時を経て、ゆっくりと成長していった結果、あれほど深く広い森となったのだろう。

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